夜眠れない – 本当の原因はストレスの放置?
私たちの身体は、日が落ちれば眠りに落ちるようにできています。
ところが夜になっても眠れない、眠りにつくまでに時間がかかるといった状態に陥ることがあります。
脳機能や身体的病気による「不眠症」ではない場合、原因は何らかの「精神的ストレス」にあると考えられます。
適度なストレスは次への弾みとなり良い方向へ作用しますが、過度なストレスや継続するストレスは、心身に悪影響を及ぼします。不眠もその一つなのです。
ストレスで眠れなくなるのはなぜ?
私たちの体は、
- 感情を司る精神
- ホルモンや神経伝達物質を作り、運ぶ臓器
- それらを覆(おお)う肉体
ストレスによって心に負荷がかかった場合も同じで、特に不眠につながるのは「自律神経系」と「内分泌系」です。
自律神経系のはたらき
自律神経系は、自動的に生命の維持に関わる基本的な機能を調整しています。例えば、呼吸数、血圧、発汗などは、意思と関係なく変化しています。これは、自律神経が正常に働いていることによるものです。
自律神経には「活動を促進する交感神経」と「休息を促進する副交感神経」があります。この二つがバランスをとりながら働くことで、正常な生命活動を維持しているのです。
しかし、過度なストレスを受けると、脳からの指令によって交感神経の活動が活発化してしまいます。
内分泌系のはたらき
内分泌系はホルモンの分泌によって生命維持にかかわる基本的な機能を調整しています。
アドレナリンやセロトニンという言葉を聞いたことのある方もいらっしゃるでしょう。これらは必要に応じて適宜放出されているホルモンです。
このホルモンの一種にコルチゾールがあります。コルチゾールは副腎皮質ホルモンで、抗ストレスホルモンとも称されます。このホルモンは交感神経を刺激し、身体を緊張状態に導く働きを持っています。
ストレス状態になると
この自律神経系と内分泌系の二つの働きによって、体はストレスという敵から生命を守るために臨戦態勢に移行します。
こうして交感神経が優位になると、副交感神経の働きが抑制されます。睡眠は副交感神経の働きによるものですから、結果的に睡眠に障害が起きてしまうのです。
さらに、睡眠不足で脳の疲労が蓄積されると、よりストレスを感じやすくなり、一層眠れなくなるという悪循環に陥ることもあるのです。
前向きな気持ちがストレスを隠す?
病気でもないのに眠れないという方の多くは、ストレスが原因の睡眠障害です。
ところが「ストレスなんてないのに」という方も少なからずいらっしゃいます。しかし、実は「ストレスがない」のではなく「ストレスの自覚がない」という場合があるのです。
本人が自覚する・しないに関わらず、身体はストレスに対する反応を起こします。そうしないと生命維持に支障が起きるからです。
睡眠障害は体からSOSが出ている状態なのです。
ストレスの自覚がない人には、以下の特徴がみられます。
- 前向き
- 頑張り屋
- 自分の努力や状況を過小評価する
それぞれの特徴には問題ありません。前向きな考え方でストレスを乗り切るという方法も効果があります。
しかし、何もかも前向きにとらえる、努力でなんとかなると考えることで、ストレスがかかっていることから目を背(そむ)けているだけという場合は問題かもしれません。
また、行き過ぎたポジティブ思考の裏に、自信のなさや、他人から「前向きで努力家の自分に見られたい」という願望などを抱えている方も多々見受けられます。
こうした感情を抱えたポジティブ思考はストレスの原因となってしまうのです。
どんな人も、常に前向きな考え方で居続けることはできません。無理に前向きになろうとするよりも、前向きな考え方で乗り切ろうとしている出来事が起きた時の感情や、その後の気持ちを見直してみることをおすすめします。
気づかないストレスに対処する方法
私たちは常に大小様々なストレス要因に接しています。
常にストレスにさらされていると認識し、意識的にストレス解消をしていくことは、心身への影響の予防にもなりますよ。
「ストレス解消の3つのR」を生活に取り入れ、見えないストレスへの対処を心がけると良いでしょう。
- レスト(Rest・休養):良質な睡眠や何もしないで過ごす時間
- リラクゼーション(Relaxation・癒し):音楽鑑賞や軽い運動など
- レクリエーション(Recreation・活性化):料理、楽器の演奏、スポーツなど
レスト(休養)
レストの重要性は誰もが知っているとおりです。
睡眠の質を上げるために寝具や空調の環境を整えると良いでしょう。また食事の栄養バランスに気をつける、適度な運動をする習慣をつけることも良質な睡眠を得るために効果的です。
リラクゼーション(癒し)
リラクゼーション効果を得やすいのは入浴です。38~40℃のぬるめのお湯にゆっくりと浸かることで筋肉の緊張がほぐれ、副交感神経の働きが活性化し、睡眠を誘導します。
浴室を薄暗くする、好きな香りのバスアロマなどを入れる、浴槽で軽い運動をするなども効果的です。
入浴は布団に入る30分~1時間前にはすませ、湯冷めしないように気をつけて下さい。
レクリエーション(活性化)
レクリエーションは日常的な仕事や家事から自分を切り離し、精神のリフレッシュに効果的です。例えば、手先を使う作業は脳の活性化に効果が高いことはよく知られています。
中強度の有酸素運動や筋肉トレーニングは25~60分行うことで、気分にプラスの変化が現れることが実験の結果明らかになっています。これらの運動を定期的に行うことで精神的に安定し、プラスの気分を維持しやすいことも分かっています。
さいごに
ストレスによる睡眠障害に最も効果的なのは、ストレスを溜めないことです。
ストレス解消法を生活習慣に組み込み、布団に入る前1時間程度は自分のための時間を持つと良いでしょう。
また、ストレスなど感じないという人は、自分の感情と向き合ってみることをおすすめします。