睡眠のメカニズム – 最も基本的な、2つの知識

睡眠は脳の機能、身体の機能を常に一定に保つためには、なくてはならないものです。
人は睡眠によって記憶を固定させ、脳機能や身体機能を一定に保つ事ができます。

たった数日間寝ないだけで、脳の高次機能には障害が表れ、記憶障害や注意障害を引き起こしてしまいます。
論理的に考える力がなくなり、突然怒ったり泣き出してしまうような感情の暴走を引き起こします。

また、2〜3週間睡眠を取らなければ、正常な意識を完全に失い、幻覚を目にしたり、死に至ることになります。
睡眠とは、それほど重要な生命活動なのです。

最近では、睡眠について「●時間寝なければ病気になる」「こんな食べ物・飲み物が睡眠に良い」などといった情報を、よく目にします。
眠れない日や朝起きれない事が何日か続くと「もしかして病気なのではないだろうか?」というふうに過剰に心配してしまう方もいるでしょう。

そうならない為にも、そして、様々な情報に惑わされないようにするためにも、睡眠について最低限の基本的な知識と、メカニズムを知っておく事が重要です。

基本的な睡眠のメカニズム

まず、一言に睡眠と言っても、睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠と呼ばれる2つの異なる睡眠が存在します。

睡眠サイクル
さらに、私たち人間は、自然環境の周期(日が昇り、沈む24時間)に身体機能を適応させるために、自身の体内に生体リズムと呼ばれる、24時間の周期(体内時計)を持っています。
これを概日リズムと呼びますが、睡眠や覚醒のサイクル、その他人間の活動の大部分は、この概日リズムによって、ある程度支配されています。

これら人間に備わった睡眠のメカニズムが正常に機能しないと、不眠症や過眠症などの睡眠障害を引き起こします。

睡眠の種類とは?

レム睡眠とノンレム睡眠、それぞれの詳しい説明については、別途詳細な説明ページ(レム睡眠とノンレム睡眠の違い)を用意していますので、ここでは簡単な説明のみに留めています。

レム睡眠

レム睡眠を簡単に説明すると、脳は活動しているのに、身体は休んでいる状態です。
自律神経は不安定になり、それに応じて心拍も安定しません。金縛りや寝言など、睡眠時の行動異常が起こるのも、このレム睡眠の時です。

・レム睡眠時の身体の状態

レム睡眠時の身体

  • 脳波は活動状態を示す、小さな振幅となる。
  • 眼球はまぶたを閉じているにも関わらず、激しく動く事があり、この事をレム(REM:急速眼球運動)と呼ぶ。
  • 身体の動きを示す筋電図は小さい振幅で、身体が休息状態である事が分かる。

ノンレム睡眠

ノンレム睡眠は脳が休息しており、身体も休んでいる状態です。一般的には、脳が休息状態であることから、深い眠りとも言われます。
この時、自律神経は副交感神経が優位に働き、心拍数や呼吸がゆっくりとしたものとなります。

・レム睡眠時の身体の状態

ノンレム睡眠時の身体

  • 脳波は休息状態を示す、大きな振幅となる。
  • 眼球はレム睡眠とは異なり、動く事はない。
  • 身体の動きを示す筋電図は、レム睡眠と同様の休息状態を示す。
健全な睡眠のサイクル

睡眠に問題のない健康な人の場合、通常はレム睡眠から始まり、ノンレム睡眠とレム睡眠が、90分程度のサイクルで交互に訪れます。
人によってはこの90分の時間に差はありますが、大まかに60分から120分の間を推移します。
浅い眠り(レム睡眠)から徐々に深い眠りへと入り、脳を休息させるノンレム睡眠が訪れるのが、健康な睡眠と言えます。

睡眠障害の引き金 – 不規則な睡眠

夜間に睡眠を取り、早朝に目覚める習慣ができている人の場合、睡眠の前半にノンレム睡眠が多くあらわれ、明け方にレム睡眠が多く出現します。
対して、睡眠時間が不規則な人、交代勤務などで睡眠のリズムが作りづらい人などの場合、健全な睡眠のパターンを作る事が難しくなってしまいます。

本来眠るはずではない時間に寝ようとしたり、いつもなら深い眠りに落ちる時間帯に起きようとしたりすると、レム睡眠とノンレム睡眠のサイクルが大きく崩れてきてしまいます。
この事は、不眠症や起床時の不調、加眠症に繋がる原因として、よく挙げられるものです。

睡眠はできるだけ夜の決まった時間から取り始め、朝は毎日決まった時間にとる事が望ましいのです。

概日リズム – 24時間のリズム

地球は1日を24時間、朝から夜へと変化していきます。
この24時間というリズムの概念は、私たち生物の体内にもしっかりと刻まれています。これを、概日リズム(サーカディアンリズム)と呼びます。概日リズムについて、詳しくは別のページで解説します。

概日リズムがずれるとどうなる?

先ほどは、分かりやすくする為に、該日リズムは24時間と書きましたが、人の体内のリズムには、正確には1時間程度のズレがあります。
地球のリズムは24時間ですが、毎日1時間づつズレていくと、10日で10時間ものズレが発生してしまいます。

深夜12時に寝ていた人が、10時間もズレてしまうと、朝の10時から寝始めるのが正しい身体のリズムとなってしまいます。つまり、概日リズムがずれていくと、本来眠るべき夜の時間に眠れなくなったり、睡眠のリズムが大きく崩れているということになります。

しかし、現実にはそのような事は起こりません。なぜかと言うと、生物にはこのズレをリセットするための機能が備わっているからです。

概日リズムをリセットする機能

毎日、該日リズムをリセットして、24時間のリズムを正常に保つには、同調因子と呼ばれる因子の力を借りる必要があります。
同調因子には様々な物がありますが、実は1番大きな因子は、太陽の光なのです。意外に思う方も多いでしょう。

朝に太陽の光を浴びる事で、人間の体内時計(該日リズム)はズレを修正し、正確に24時間を刻み始めます。

例えば、全く太陽の光がない、蛍光灯の光だけの世界では、人は時計があっても24時間の概念を失ってしまうと思います。
人間だけでなく、ほとんどの生物が古来から太陽の光を軸にして、1日の身体のリズムを作り出しているのです。

朝に光を浴び、夜は暗くするメリット

昔から、朝は太陽の光を浴びると良いと言われていますが、朝に太陽の光を浴び、概日リズムを整える為には、ごく当然の事だとも言えます。
いつまでもカーテンを開けずに、太陽の光を浴びなければ、脳は覚醒のタイミングを逃してしまいます。

また、寝る前はテレビやパソコンの画面を見ない方が良い、というふうに言われることがあります。これらも、概日リズムを乱し、睡眠障害の原因となる行動ですので、根拠のある話と言えます。

パソコンやテレビが放つ青色系の光は、例え光の強さが強くなくても充分に概日リズムに影響を与えます。既に太陽の光が出ていない夜の時間帯に関わらず、電子機器の青色系の光を注視することによって、昼間の時間と勘違いを起こしてしまうからです。

概日リズムを24時間に同調させ、朝からしっかり目を覚まし、夜に自然な眠りを得るためには、基本的な生物の習慣に従うことが効果的です。
その習慣とは、朝は光をしっかりと浴び、夜間は明るい光や電子機器などの光を、なるべく浴びない事です。
就寝前3時間くらいからは、テレビやパソコン、スマートフォンの画面など、青色系の光を避けることをおすすめします。