この症状はゾルピデムの副作用?!対処方法は
頭がボーッとしてフラフラする。昨日やったことや話したことを全然覚えていない。こんな症状があると、何か重大な病気かもしれないと心配になります。
でも、もしゾルピデムを服用している時に出た症状なら、それはゾルピデムの副作用かもしれません。
副作用と聞くと、ますます不安でいっぱいになってしまうかもしれませんね。
そんな時は、まずは一度大きく深呼吸をしてみて下さい。そして、落ち着いて、これからご説明する副作用の症状やその対処法について読んでみて下さい。行動を起こすのはそれからでも決して遅くはありません。
ただし、頭のふらつきが尋常でなかったり、呼吸が苦しかったりするなら、早く処置をした方が良いので、すぐに病院に行きましょう。
ゾルピデムの副作用の症状を詳しく
病院でゾルピデムを処方された時、お医者さんや薬剤師さんに、「頭がもうろうとするかもしれないから、気をつけてください。」などと説明を受けた方も多いでしょう。
そんな説明をされると、なんだか怖い薬のようで、不安な気持ちになります。また、実際、頭がもうろうとしてしまったという方もいるかもしれません。
この、頭がもうろうとするといった症状は、現在主流のベンゾジアゼピン系や、ゾルピデムのような非ベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤のうち、超短時間型のものに特徴的な副作用です。
ゾルピデムの製品名は「マイスリー」、またはジェネリック医薬品だと「ゾルピデム酒石酸塩」とついた錠剤や内服液です。
睡眠導入剤の種類について、詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。
ゾルピデムで起こり得る副作用
ゾルピデムで現れやすい副作用には、以下のようなものがあります。
- 眠気
- めまい・ふらつき
- 一過性前向性健忘
- 肝機能障害
1.眠気
眠気は、睡眠導入剤なのだから当然と思うかもしれませんが、これは服用直後のことではなく、翌朝以降の眠気のことを言っています。翌日もゾルピデムの作用が残ってしまい、日中にも強い眠気を感じることがあるのです。
2.めまい・ふらつき
めまいやふらつきが起こると、身体をまっすぐに保てず、フラフラして、まっすぐに歩けないといった症状が起こります。また、ひどくなると、立ちくらみや頭痛、しびれ感を伴うこともあります。
3.一過性前向性健忘
一過性前向性健忘とは、一時的に、ある時点から先の出来事を覚えていられないという症状です。服用後から寝入るまでのことをまったく覚えていなかったり、服用後に夜中に目覚めて何か行動したり話したりしても、そのことをまったく覚えていないことがあります。
4.肝機能障害
肝臓の機能に悪影響が出て、黄疸(おうだん)の症状が現れることがあります。黄疸になると、皮膚や白目が黄色くなったり、尿が濃い黄色や褐色になったりします。また、食欲不振、吐き気や嘔吐(おうと)、だるさなどの症状が出ることもあります。
他にも、注意したい副作用として、以下のようなものがあります。
- 精神症状、意識障害
- もうろう状態
- 呼吸抑制
5.精神症状、意識障害
精神症状と意識障害では、いずれも、集中力や判断力が低下して、考えがまとまらない状態に陥ります。
せん妄という頭が混乱した状態になり、錯乱や幻覚、興奮などの症状が引き起こされたり、眠っている状態で起き上がって行動をしてしまう夢遊症状などが現れることがあります。また、異常な夢や悪夢を見ることもあります。
6.もうろう状態
もうろう状態とは、話しかければ反応はするものの、意識が低下している状態です。また、異常な行動をとることがありますが、そのことを覚えていないという特徴があります。
もうろう状態になると、ひどくお酒に酔っぱらったような状態(酩酊状態)や、過食、徘徊、その他普段とらないような行動をとったりします。
7.呼吸抑制
呼吸抑制とは、息苦しく感じたり、息切れがする状態のことです。以下のような疾患で呼吸機能が非常に低下している場合に起こることがあります。
- 肺性心(肺の疾患に基づく心臓の病気)
- 肺気腫(肺の中の空気を外に出せなくなる病気)
- 気管支喘息(ぜんそく)
- 急性期(初期)の脳血管障害
上記のような場合には、炭酸ガスナルコーシ スと言って、体内に炭酸ガスが充満して(高炭酸ガス血症)、意識障害が起こり、頭痛やけいれんが起こったり、ひどい時には昏睡(こんすい)状態に陥ることがあります。
原則このような方にはゾルピデムが処方されることはありませんが、どうしても必要な場合は処方されないとも限りませんから、注意しましょう。
副作用はどのくらいの頻度で起こる?
ここまで、ゾルピデムの服用で生じる可能性のある副作用について見てきましたが、これらは一体どのくらいの確率で起こるのでしょう?
以下は、マイスリーの販売が開始された後に行われた調査結果をまとめたものです。
マイスリーを服用した方4,485名のうち、230名(5.1%)に副作用が現れました。
副作用 | 人数(割合) |
眠気 | 21名(0.5%) |
ふらつき | 18名(0.4%) |
めまい | 5名(0.1%) |
肝機能障害 | 18名(0.4%) |
一過性前向性健忘 | 11名(0.2%) |
精神症状、意識障害 | 16名(0.3%) |
もうろう状態 | 5名(0.1%) |
(※精神症状、意識障害については、せん妄、錯乱、脱抑制、不安、幻覚、幻視、興奮、気分高揚、夢遊症状、悪夢が現れた人数(割合)を合計しました。)
参考:アステラス製薬㈱「マイスリー錠 インタビューフォーム」
※上記からインタビューフォームのPDFをダウンロードできます。
最も多い眠気でも0.5%と、それほど多くの副作用が現れるわけではありませんが、もし副作用かなと思われる症状が出たら、どうすればよいのでしょうか。
副作用が現れたらこんな対処を
ゾルピデムは、服用後30分~1時間程度で効果が現れ始めます。そして2時間~長くても4時間くらいで効果が半減し、約12時間後にはほとんど身体の外に排出されます。
ですから、ほとんどの副作用は一時的なもので、その後は徐々に治(おさ)まることが多いでしょう。
しかし、もし実際に副作用が出てしまったら心配ですし、一時的なもので治まらないこともありますから、副作用が現れた際の対処法についてご説明しておきましょう。
急激な眠気や、めまい・ふらつきが起こったら
もし、急激な眠気や、めまい・ふらつきが現れたら、横になるか、背もたれやひじ掛けのある安定した椅子に腰かけるようにしましょう。
急激な眠気に襲われ、倒れるように寝入ってしまったり、めまいやふらつきで転倒してしまうかもしれません。
実際、転倒して、骨折してしまったという方もいらっしゃいます。筋力が弱い方や、高齢の方に起こりやすいので、注意しましょう。
また、急に眠気が襲ってきたり、注意力や集中力が低下しますので、車や自転車の運転、その他危険が伴うような機械の運転は避けましょう。
一過性前向性健忘が起こったら
もし、まったく覚えていないとういうような症状が現れたら、担当のお医者さんに相談して、減量するか別の薬に変えてもらった方が良いでしょう。
すぐに病院に行けない場合でも、また同じようなことが起きないとも限りませんから、以後は服用するのは止め、なるべく早く受診するようにしましょう。
肝機能障害が起こったら
もし、黄疸のような症状が現れたら、まずは病院で肝機能を回復させるための適切な処置をしてもらいましょう。その上で、寝つきの悪さなどの睡眠障害を治療するようにしましょう。
ゾルピデムは肝臓で代謝されます。そのため、肝臓の機能が低下した状態でゾルピデムを服用すると、うまく代謝できず、作用が強く現れることがあるのです。ですから、肝臓の治療をないがしろにしてゾルピデムを飲み続けるのはよくありません。
精神症状、意識障害、もうろう状態が起こったら
もし、もうろうとしたり、おかしな言動や行動をとったりするようなら、まずは、心を落ち着かせ、静かに休む必要があります。自分では判断ができない状況ですから、事前に家族や周りの人にこのような可能性があることを伝えておいて、助けてもらいましょう。
このような副作用は、とくに10mg(ゾルピデムの最高用量)の服用で起こることが多いので、減量するか薬の変更が必要になります。お医者さんとよく相談しましょう。このような症状が現れたら、ゾルピデムの服用は止めて、早めに受診しましょう。
呼吸抑制が起こったら
もし、息苦しさがひどいようなら、すぐに病院に行きましょう。そして、ゾルピデムを服用したことをお医者さんに伝えましょう。その時に、呼吸機能に関する上記のような疾患があるなら、そのことも伝えましょう。
ゾルピデムとの付き合い方
副作用の症状を詳しく見ていると、何だか心配になりましたか?
でも、副作用が生じる確率はそれほど高くはありませんし、正しく使えば、怖いものではありません。
そして、もし副作用が現れてしまったら、すぐに服用を中止して、お医者さんに相談しましょう。
そのためには、ぜひ次の3つのことを実行してみてください。
(1)何でも包み隠さず
病院では、何でも包み隠さずに話しましょう。
病院に行く前に、次のようなことをメモしていくと、話がスムーズでしょう。
- 何時に服用したか
- 何時に布団に入ったか
- どんな症状が出たか(家族や周りの人から聞いた話も)
- 何時ごろ症状が治まったか
- 薬を減らしたい、または他の薬に変えたいなどの意見
また、効き目が弱いからと言って勝手に2回分を飲んでしまったり、アルコールと一緒に飲んでしまっていたりすると、病院の先生にはなかなか言い出せないものですね。
でも、お医者さんに状況を正しく知ってもらうことが、適切な処置につながるのですから、隠し事などせず、すべて話しましょう。
(2)家族があなたのサポーター
もうろうとしたり、おかしな言動や行動、夢遊症状が現れた時、あなた自身は判別がつかない状態になっています。そこで助けになるのが、一緒に暮らしている家族です。
何かが起こった時のために、事前に家族に話しておくと良いでしょう。
家族の中でコミュニケーションが取れていれば、ご家族の誰かに同じようなことが起こっても、すぐに対処できますね。
(3)正しい飲み方が大切
何よりも大切なのが、正しく服用するということです。
- 寝る直前に服用する
- 過量に服用しない
- アルコールと一緒に服用しない
ゾルピデムは、服用してから効果が現れ始めるまでの時間が短いのが特徴です。ゾルピデムを服用する時は、布団に入る準備をしてから、寝る直前に服用しましょう。また、十分な睡眠時間が取れないような時は、服用を控えましょう。
また、もし過量に服用すると、ひどい場合は昏睡状態に陥ったり、血圧低下や呼吸抑制・無呼吸などの症状が現れることがあります。過量服用は絶対に止めましょう。
最後に、寝つきが悪い方がやってしまいがちなアルコールとの併用ですが、これも絶対に止めてください。
ゾルピデムをアルコールと一緒に服用すると、以下のような症状が現れやすくなります。
- 手足の動きがぎこちなくなる
- ろれつが回らなくなる
- ふらふらする
- 物が二重に見える
ゾルピデムは、寝つきの悪さ(入眠障害)に対して処方される薬です。しかし、寝つきが良くなるからと言って、副作用を我慢してまで使うものではありません。副作用だと思われる症状が出たら、我慢せず服用を止めて、お医者さんに相談しましょう。