睡眠導入剤の種類 – 最近注目の薬とは?

布団に入っても、なかなか寝付けない。何度寝返りを打っても眠れない。周りが思う以上に当人にとっては辛いものですね。
ある調査では、不眠が疑われる方の約40%が寝入るまでに、30分以上かかったと回答し、10%以上は1時間以上もかかっていました。

そんな寝つきの悪さ(入眠障害)に効果があるのが、睡眠導入剤です。
ここでは、睡眠導入剤の種類と、最近注目の睡眠導入剤について取り上げます。

睡眠薬の種類

睡眠導入剤の種類

睡眠導入剤と睡眠薬は、睡眠効果が持続する時間(半減期)によって、以下のように分けることができます。
下の表からもお分かりいただけるように、実は、半減期が短い睡眠薬のことを、特に睡眠導入剤と呼んでいるのです。

  効果が持続する時間(半減期) 睡眠導入剤 or 睡眠薬
超短時間型 2〜4時間 睡眠導入剤
短時間型 6〜10時間 睡眠導入剤
中間時間型 20〜30時間 睡眠薬
長時間型 30時間以上 睡眠薬

睡眠導入剤には、超短時間型短時間型の2種類があります。
これらは、効果が現れるまでの時間が短いという特徴があり、寝る直前に服用するとすぐに効果が現れ始めるため、速やかに眠りにつくことができます。

現在主流の睡眠導入剤

現在主流の睡眠導入剤は、ベンゾジアゼピン系非ベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤です。

しかし、最近では、メラトニン受容体作動薬(2010年販売開始)やオレキシン受容体拮抗薬(2014年販売開始)と言ったものも使用されるようになってきました。

効果が持続する時間(半減期)ごとに、主な睡眠導入剤を、下の2表にまとめてみましたので、病院で処方された睡眠導入剤と照らし合わせて、参考にしてみてください。

超短時間型の主な睡眠導入剤

分類 一般名 製品名 効果が持続する時間(半減期) 効果が現れるまでの時間
⾮ベンゾジアゼピン系 ゾルピデム マイスリー   1.8~2.3時間 0.7~0.9時間
ゾピクロン アモバン 3.9時間 1.1時間
エスゾピクロン ルネスタ 4.8~5.2時間 0.8~1.5時間
ベンゾジアゼピン系 トリアゾラム       ハルシオン 2.9時間 1.2時間
メラトニン受容体作動薬 ラメルテオン ロゼレム 0.9~1.1時間 0.8~0.9時間

短時間型の主な睡眠導入剤

分類 一般名 製品名 効果が持続する時間(半減期) 効果が現れるまでの時間
ベンゾジアゼピン系 エチゾラム デパス 6.3時間 3.3時間
ブロチゾラム レンドルミン 7.0時間 1.5時間
リルマザホン リスミー 10.5時間 3.0時間
ロルメタゼパム エバミール

ロラメット

10.0時間 1.0~2.0時間
オレキシン受容体拮抗薬 スボレキサント ベルソムラ 10.0時間 1.5時間

どのくらいで効果が現れ始めるのかが分かれば、「薬を飲んだのに眠れない」と悩む必要もなくなるかもしれません。
また、どのくらい効果が長く続くかが分かっていれば、起きた時の対処の参考にもなるでしょう。

例えば、眠気が強くて起きられなかったり、起きてからもボーッとしてちっとも覚醒しなかったりするのなら、薬が合っていないのかもしれません。そうすれば、病院で相談するきっかけにもなりますね。

比較的新しい薬:メラトニン受容体作動薬とオレキシン受容体拮抗薬

では、最近販売が開始された、今注目の薬、メラトニン受容体作動薬とオレキシン受容体拮抗薬について詳しく見てみましょう。

これらと、ベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤の違いは、分類と作用機序(作用メカニズム)です。
また、同じような副作用が見られることがありますが、従来のものと違って、長期間服用していた薬を突然止めた時に起こる離脱症状や、薬を手放せなくなる依存などが少ないと言われ、期待されています。

メラトニン受容体作動薬

メラトニン受容体作動薬は、処方せん医薬品に分類されています。

私たちが夜眠くなるのは、ちょうど夜寝るくらいの時間になると、脳内でメラトニンが分泌されるためです。
メラトニンが、脳の視交叉上核(しこうさじょうかく)にあるM1受容体に結合すると、体温が下がって眠気が促されるのです。また、M2受容体に結合すると、体内時計の調整が行われることが分かっています。

メラトニン受容体作動薬は、このメラトニンの作用を利用して作られた薬で、メラトニン受容体作動薬がメラトニン受容体に結合することで、眠気を促し、体内時計を調整します。

メラトニン受容体作動薬

脳の中枢神経に作用するベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤に比べると、若干効果が弱いですが、睡眠リズムの乱れによる睡眠障害に効果を発揮することと、離脱症状や依存などの面で、期待されている今注目の薬です。

オレキシン受容体拮抗薬

オレキシン受容体拮抗薬は、処方せん医薬品と習慣性医薬品に分類されています。

私たちが日中活動的に過ごせるには、脳内でオレキシンが分泌されるためです。オレキシンが受容体に結合して、脳が覚醒しているのです。そして夜になると、オレキシンの分泌量が減り、受容体に結合する量も減るので、脳の覚醒状態が抑制され、眠くなるのです。

オレキシン受容体拮抗薬は、オレキシンが受容体に結合するのをブロックする薬です。オレキシン受容体拮抗薬が受容体に結合すると、オレキシンが結合できなくなり、結果的に脳の覚醒が抑制されて眠気が促されるのです。

オレキシン受容体拮抗薬

メラトニン受容体作動薬と同様、ベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤に比べると、若干効果が弱いですが、入眠障害だけでなく中途覚醒にも効果を発揮することで、期待されている今注目のもう一つの薬です。
ただし、習慣性医薬品に指定されているとおり、薬物依存に陥る危険性があるため、注意が必要な薬でもあります。

新しい薬 – 知っておきたい大切なこと

以前、よく使用されていた睡眠導入剤は、副作用が強いのが難点でした。しかし、最近主流のベンゾジアゼピン系非ベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤は、それに比べると、随分と副作用が抑えられています。
そして、それよりももっと副作用の可能性が低いと言われているのが、最近開発されたメラトニン受容体作動薬オレキシン受容体拮抗薬です。

誰だって、「治療効果があって、その上副作用が少ない薬が開発された」と言われれば、その薬を使いたくなります。

でも、ここで気をつけてほしいことは、開発されてすぐの薬は、まだまだ実績が少ないということなのです。

薬が開発されるまで

1つの薬を開発するのには、10年以上の長い期間をかけて、様々な研究を重ね、データを積み上げる必要があります。

ここで、薬が開発されるまでを、簡単にご説明しましょう。
薬を開発するには、最近テレビなどでもよく耳にする、「臨床試験」が行われます。人が飲んで、期待する効果が得られるか、副作用がないかなどを研究するのが臨床試験で、下の表のように、実際に多くの人に飲んでもらい、そのデータを集めます。

対象とする人 調べたいこと
第Ⅰ相試験 健康な成人男性(または女性) 副作用の有無や発生頻度など
第Ⅱ相試験 対象の疾患の患者さん(少数) 治療効果と、副作用の有無や頻度など
第Ⅲ相試験 対象の疾患の患者さん(多数) 治療効果と、副作用の有無や頻度など

はじめは、どんな副作用が出るかも分からないので、健康な人に飲んでもらいます(第Ⅰ相試験)が、効果を見るために、その後は対象の患者さんに飲んでもらいます(第Ⅱ相、第Ⅲ相試験)。

このように、10年以上もの時間をかけて、これだけ多くの人に飲んでもらって効果や副作用を見ているのだから、実績は十分じゃないかと思うかもしれませんね。

販売後は予測できないことも

しかし、この時に飲んでもらう対象の疾患の患者さんというのは、主にその疾患だけにかかっている方なのです。
一般に使われるようになれば、色々な方が薬を飲みます。その中には、他の病気にもかかっている方、他の薬を飲んでいる方、身体が弱い方、アレルギーの方、高齢の方など...挙げればキリがありません。

そういう色々な方が飲んでも、期待する効果が得られるのか、重大な副作用が現れないのか、というのは、実際に多くの方々に飲まれて、はじめて分かることなのです。場合によっては、薬の開発中には、とても予測できなかった事態が起こることもあります。

ですから、新しく、効果が高く、副作用が少ない薬が出たからと言って、あなたご自身に効果があって、副作用が出ないかどうかは、試してみないと分かりません。

ここで大切なことは、気になることがあれば、何でもお医者さんに相談することです。

新しい薬を試してみたいと相談すれば、症状に合っているかをお医者さんが判断してくれるでしょう。
そして、もう一つ大切なことは、お医者さんや薬剤師さんの指示を守り、用法・用量を守って薬を飲むことです。薬は適正に使用してはじめて効果が現れるものです。そうしないと副作用の危険性が高くなってしまいます。

気になる睡眠導入剤の副作用については、以下の記事で詳しく説明しています。

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