お酒を飲んだらハルシオンは絶対飲んだらダメ?
社会生活を営む大人であれば、お酒の席に参加する機会は少なからずあります。また、お酒はリラックスするためのアイテムでもあります。
しかし、睡眠薬を服用している場合は、極力飲酒を控えましょう。
それは、お酒と睡眠薬を短時間で用いると、相互作用によって副作用が起こりやすくなるからです。中でもハルシオンは、他の睡眠薬では効果が得られなかった方、重度の不眠に悩む方に処方されることが多い薬です。服用には十分に注意する必要があります。
ハルシオンってどんな薬?
睡眠薬の中でも、即効性が高く、効果も強いのが「ハルシオン」です。主に入眠障害に用いられますが、第一段階で処方されることは少ない薬です。
ハルシオンは、人工的に脳の働きを急激に抑制するため、呼吸抑制や一過性前向性健忘を起こすことがあります。また、服用後~半減期(効果の強さが半分になる時間)までに動くと、ふらつきから転倒につながることもあります。
ハルシオンは、他の睡眠薬よりも、効果、副作用ともに強めな薬ですから、服用には十分な注意をする必要があります。
ハルシオンを飲むならお酒は絶対にダメ?
ハルシオンの場合、アルコールは「併用注意」とされています。その理由は以下の通りです。
【臨床症状・措置法】精神神経系等の副作用があらわれるおそれがある。なお、できるだけ飲酒は避けさせること。
【機序・危険因子】中枢神経抑制作用が増強される。
出典:ファイザー株式会社「ハルシオン」添付文書PDF
ハルシオンよりも作用の弱い睡眠薬の表記は、添付文書に以下のように記載されています。
- マイスリー:「できるだけ控えさせること」
- レンドルミン、ロヒプノール:「避けることが望ましい」
比較してみると、ハルシオンの方が、一段強調された表現が使われていることが分かります。
つまり、禁止はされてはいませんが、ハルシオンは他の睡眠薬に比べて十分な注意を必要とし、アルコールとの併用は避けるべき行為であるということなのです。
睡眠薬とアルコールは、どちらも脳の働きを抑制する作用があります。これらの併用によって作用が増強し、脳が過剰に眠ってしまって、事故や異常行動の原因になります。
このため、ほとんどの睡眠薬はアルコールとの併用に注意を促しているのです。
長期的な併用はさらに危険
併用によってすぐに現れるふらつき、呼吸抑制、異常行動などは身体的な危険に直結します。これとは別に、長期的に現れる問題もあります。
それが「耐性・依存性」の形成です。
ハルシオンは、睡眠障害の中でも重度の不眠症患者に対して処方されることの多い薬です。と言うことは、ハルシオンへの耐性ができてしまうと、他に睡眠を補助するための薬がなくなってしまうのです。
もし睡眠薬の効果を得られなければ、根本的な問題が解決して自然に眠れるようになるまで、長い間不眠に苦しむことになります。
また、依存性が生じると、ハルシオンやアルコールが手放せなくなります。
睡眠薬で生じる依存は、主に身体依存であり、薬が体内にあることが正常だと脳が認識している状態です。一方薬が切れた状態は、体にとって異常な状態であり、薬を飲まずにはいられなくなります。
また、無理にやめようとすると、離脱症状が起こります。これによって、生活上の困難や、これまで以上の不眠、精神不安など、ひどい苦痛が生じることになります。
長期間の薬の服用
↓
薬が体内にあることが正常だと脳が認識
↓
薬が切れると離脱症状が生じる
そのお酒どうしても飲まなければいけませんか?
ハルシオンは、他の睡眠薬以上に、厳格にお酒を避けた方がよい薬です。
しかし、社会生活をしていればお酒を供する席に参加しなくてはいけないこともあります。そんな時の対処法は…
①友人との飲み会
親しい友達との飲み会なら、ソフトドリンクで付き合いましょう。
②会社、コミュニティの付き合い、慶弔の席など
グラスに口をつける程度なら、さほど問題はありません。しかし、勧められるままに口をつけていたら、グラス2~3杯になってしまうことも少なくありません。最初から断るのが得策でしょう。
断っても聞いてもらえない場合には、「ドクターストップ」だと言いましょう。ほとんどの人はその一言で無理に勧めることはしません。
それでも勧められたら、「この場で倒れたり、錯乱して救急搬送される可能性があります。皆さんにご迷惑をおかけするわけにはいかないので、ご協力いただけませんか?」と聞いてみましょう。
この時点ではハルシオンを服用していないのですから、これは正しい言い訳ではありません。しかし、自分の身を守るためには「嘘も方便」と割り切りましょう。
③飲酒の習慣がある場合
我慢できる程度なら、不眠が解消されるまで我慢しましょう。お酒を飲みたくなったら、ハーブティーやフルーツで口を変える、軽く運動する、コメディなど笑える映画を観るなどして気分を紛らわせると良いでしょう。
しかし、飲まないことが耐えられないようなら、医師に相談することが大切です。抗酒剤もありますし、現状にあった薬への変更や、治療法を変更してもらえる場合もあります。
④止むを得ず飲酒した場合
アルコールが肝臓で分解、排出される時間を知っておきましょう。
350mLの缶ビール1本またはワイングラス1杯なら3時間程度
ハルシオンの半減期は2~4時間です。つまり、ハルシオンの服用後は5時間以上の睡眠時間を確保する必要があります。飲酒3時間後に服用すると十分な睡眠時間が取れない場合は、ハルシオンを「服用しない」で就寝しましょう。
睡眠薬を服用しないことで、寝つきの悪さ、眠りの浅さ、翌朝の辛さがあるかもしれませんが、副作用のリスクの上昇や病気の治りが悪くなるといった悪影響に比べれば大きな問題ではありません。翌日の辛さは次の眠りのサポートにつながると考えましょう。
アルコールは、人間関係の潤滑油の役割を果たすこともあります。しかし、ハルシオンに限らず、睡眠薬とアルコールは、併用するとケガや事故の可能性が高まります。
アルコールを飲むことで睡眠薬のメリットがデメリットに変換されることをしっかりと認識し、適切に対処するようにしましょう。