睡眠薬の依存とは、本当はどんなもの?

薬を心配する女性

睡眠薬を服用している人の中には、「いつまでも睡眠薬をやめられない」「睡眠薬をやめようと思うと眠れなくなる」と、不安に感じている人がいるようです。

しかし、そうした人のほとんどは

  • 睡眠リズムが取り戻せていない
  • 睡眠に必要なホルモンが十分に分泌できる状態になっていない
  • 睡眠薬がないと眠れないと思い込んでいる
といった状態にあります。

睡眠薬での「依存」は皆無ではありませんが、実際には極めて少ないケースです。
また、睡眠薬で問題になる依存で多いのは「常用量依存」で、これは正しく服用していても起きることがある軽い依存です。常用量依存は、断薬をして初めて分かります。

しかし、それが本当に依存なのか、症状が改善されていないために起きているものかといった判断は、容易ではありません。
自分が薬に依存しているのではないかと疑う前に、「睡眠薬の依存」について正しい知識を持ちましょう。

薬物依存とは

脳に悪影響

薬物依存とは、「その薬物の使用をやめようとしても、容易にやめることができない生体の状態」を指します。
依存には「精神依存」「身体依存」の2種類があり、この順番で形成されます。

精神依存

「精神依存」は、薬物摂取による脳内のドーパミン(A10)神経系の活性化が原因です。
依存性薬物を習慣的に摂取すると、脳内の神経機能に異常が生じ、ドーパミン神経系の活性化で得られる陶酔感、多幸感が忘れられなくなります。これによってその薬物への強い渇望、欲求が生じる状態を精神依存と言います。

しかし現在主流になっている睡眠薬は、ドーパミン系神経機能の働きを抑制する働きをするため、陶酔感や多幸感を得ることはありません。
睡眠薬を服用していて「睡眠薬を飲まないと眠れないのではないか」と不安に感じるのは、ほとんどの場合、元々の不安傾向の強さ「薬を飲まない=眠れない」という思い込みによるものです。

身体依存

「身体依存」は、依存性薬物が体内にあっても、身体が正常に機能する状態になっていることが原因です。

通常、薬物を摂取すると、呼吸や脈拍などの機能が影響を受けます。しかし、習慣的に長期に亘って薬物を摂取することで身体依存が形成されると、薬効が体内にあることが普通の状態であると判断され、正常に機能するようになります。このため、薬効が減弱・消失すると、様々な症状が引き起こされます。これを「離脱症状」と呼びます。

「精神依存」よりも注意が必要な「身体依存」

睡眠薬の種類

身体依存は、精神依存や耐性形成をほとんど生じず、社会生活上の問題行動も生じない軽い依存です。「常用量依存」とも呼ばれます。

「常用量依存」は、適正用量を急激な増量なしに、6か月以上継続服用している場合に起きる可能性があります。
服用中には特別な問題行動などは起こりません。しかし、急に服用を中止すると、症状再燃(また眠れなくなる)、反跳性不眠(前よりも眠れなくなる)、離脱症状(以下のような症状)が起こります。

離脱症状は、服用中止後2~3日以内(長時間作用型では7日以内)に起こることが多く、以下のような症状が見られます。

精神症状 不安、焦燥、イライラ、集中力低下、記憶力低下、不眠、離人感 など
身体症状 食欲低下、体重減少、嘔吐、発汗、頭痛、めまい など
知覚障害 知覚過敏(光・音)、金属味 など

他の副作用と同様、同じ薬を同じ量服用していても、常用量依存が起きる人と起きない人がいます。また、離脱症状の内容や強さについて、服用量による差はありません。常用量依存を形成するまでの服用期間は、ガイドラインでは6か月とされていますが明らかにはなっていません。

しかし、「1年以上の服用で離脱症状の発現率が82%」との報告もあるので、長期に服用すればそれだけ断薬時に困難が生じる確率は高まると言えるでしょう。
このため、睡眠薬の依存としては、精神依存よりも、身体依存(常用量依存)の方が問題視されるのです。

常用量依存にならないために大切なこと

常用量依存のリスクを下げるには、睡眠薬の服用期間を短くすることがポイントです。
そのためには、「睡眠を取り戻す努力」が不可欠です。睡眠を取り戻すために、以下の5点に取り組みましょう。

【睡眠をとり戻す5つの努力】

  • 生活習慣を見直し、改善する
  • 栄養バランスのとれた食事を心がける
  • 適度な運動を習慣づける
  • 就寝前の習慣を見直し、改善する
  • ストレスの問題に対処する

生活習慣やストレスの対処については、以下の記事をご覧ください。

睡眠薬の依存を回避するには

現在主流となっているベンゾジアゼピン系睡眠薬、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、他の薬や嗜好品などに比べて依存性が低いことが分かっています。
しかし服用期間が長くなると、依存が形成される可能性は高まります。
また、アルコールと併用を続けると、相互作用から依存が急速に形成されます。

依存を回避するための注意点

  • 自己判断で、増量・減薬・断薬をしない
  • 睡眠薬服用中は極力アルコールを避ける
  • 睡眠薬以外の「眠るための努力」をする
  • 症状が寛解・消失したら、減薬・断薬を検討する

アルコールとの併用については、以下の記事でも詳しく説明しています。

睡眠薬の正しいやめ方

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睡眠薬を服用しなくても、自然に眠気を感じられるようになったら、医師と相談して断薬に取り組みましょう。

その際、「中断時症候群」(睡眠薬を中断する時に起きる、再燃、反跳性不眠、離脱症状などの総称)が見られた場合は、医師と症状を共有することが大切です。
断薬方法は、主に以下の2種類がありますが、いずれも睡眠、身体、精神の症状を把握し、適切に対処することが必要なのです。

【漸減法】
1日量を1/4ずつ2~4週間ごとに減らす方法です。
減量によって不眠が現れた場合は、直前の用量に戻し、様子を見ながら徐々に4~8週間かけて服用を中止します。

【隔日法】
服用しない日を設けて、徐々に休薬期間を増やして服用を中止する方法です。
服用しない日を1日、2日、3日と徐々に増やし、1~2か月かけて断薬します。主に、中間作用型~長時間作用型の睡眠薬を服用している方に対して行われます。

睡眠薬による依存は禁煙と同じ

医師の指示通りに睡眠薬を服用し、断薬時に症状が出た場合には正しく対処することで、睡眠薬のデメリットをフォローできます。
むしろ、自己判断での増量・中断によって耐性が形成されることの方が、乱用、過量服用、睡眠障害の解決を困難にするなどの大きな問題につながることを認識しましょう。

また、常用量依存による症状はいつまでも続くものではありません。不快症状はありますが、危険性は少なく、「薬物依存」の言葉からイメージするような錯乱や問題行動はありません。むしろ、長年喫煙してきた人が禁煙を始めた時に生じる困難と似ています。

正しい服用方法と対処で、睡眠薬の依存は解消することができます。過度に心配するよりも、適切に服用して、医師と相談して正しい断薬に取り組み、自然な睡眠を取り戻しましょう。

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