ストレスを作り出す考え方「認知の歪み」の改善(1)
私たちは毎日多くのストレスにさらされています。そのストレスが原因で、落ち込み、憂うつ、不眠、胃痛など、精神的・肉体的な不調を訴える人も少なくありません。
ストレスにはいくつかの種類があり、中でも大きな原因になりやすいのが「心理的・精神的ストレス」と「社会的ストレス」です。
この二つの問題は、主に「感情」から引き起こされます。感情は一見自然に生じるもののように思われますが、実際は「考え方」から生まれるものです。
誰しも考え方のクセはあるもの。しかし、考え方のパターンのうち、「認知の歪み」として分類されるいくつかは、大きなストレスにつながります。
考え方は、物事に対して瞬間的に浮かぶ思考(自動思考)なので気づきにくいものです。ストレスを感じた時の考え方や行動を振り返り、どのパターンに陥っているのかを知り、変えていくことでストレスの軽減が可能なのです。
提唱者であるバーンズは「認知の歪み」を10パターンとしていますが、ここでは、重なりの大きいものはまとめ、8つのパターンを紹介します。
- 全か無か(All or Nothing)思考
- 過度の一般化
- 心のフィルター
- マイナス化思考
全か無か(All or Nothing)思考
すべてについて、「全か無か」「白か黒か」で判断する思考のことです。極端に完璧であることを求めます。このように考えると自分にも他人にも満足ができません。
しかし、世の中に「完全、完璧」なものはほとんどありません。人間も不完全なもの。そのため、失敗から学び、改善していくことで成長していくのです。
「完全、完璧」を目指すのは悪い事ではありません。高いハードルを越える努力をすることも必要です。しかし、到達できなかったからと言って、すべてがダメなわけではありません。
改善するには
- 「100点でなければ失敗」ではなく「80点なら成功」
- 「好きではないが、嫌いでもない」
- 「善行とは別に、犯罪や迷惑をかけるものでないなら悪行があってもよい」
このように考えてみると、ガチガチに縛られていた考え方や行動が少し楽になるでしょう。
過度の一般化
1回や2回の失敗や悪い出来事を一般化し、常に失敗するのだと決めつける考え方です。
一つの事象を過度に一般化すると、他の可能性が考えられず、憂うつになったり、立ち直れなくなります。この考え方は主に対人関係で起こりやすい問題です。
たとえば、近所の人に挨拶をしたのに反応がなかった時、普通の人なら「聞こえなかったのかな?」と考え、あまり気にすることはありませんね。しかし、この考え方が強すぎると、「きっと嫌われたんだ」「みんな私のことが嫌いなんだ」となってしまいます。
実際には聞こえなかったのかもしれませんし、タイミングを逃しただけかもしれません。また、その人が返事をしてくれなかったから、他の人も返事をしてくれないとは限りません。
この考え方が強くなると、「いつも」「絶対」「みんな」というような言葉のつながりが多くみられます。
改善するには
これらの言葉をつなげない、使わないようにすることで一般化の軽減につながります。
実際、「いつも」ではなく「今回は」、「絶対」ではなく「もしかしたら」、「みんなは」ではなく「あの人は」なのです。
ポイントは、先入観を入れずに目の前の事象のみを見ることです。
心のフィルター
良くない出来事や嫌な部分にこだわり、他の良い部分を認識できなくなる状態です。
全体的には上手くいったのに、小さな失敗にこだわって「でもあの失敗がなければ・・・」といつまでも気に病んでしまう。いつまでもそこにこだわって先に進めないため、気分は落ち込み、他の物事も前向きにとらえられなくなってしまいます。
こだわりとは、一見、出来事によって生まれるように思えます。しかし実際は、自分が物事を「ネガティブに見る」「先入観を持って見る」というフィルターを通して見ているために生まれるものなのです。
改善するには
大切なのは、「自分がそこにこだわり、ネガティブに考えている」ということに気づくことです。
「失敗も含めて成功」「悪いところも含めて自分」と捉えることで、ネガティブなクセを改善することができます。
マイナス化思考
喜ばしい出来事も、悪い方へすり替えてしまう考え方です。
先に挙げた「心のフィルター」は良い部分を見えなくしますが、「マイナス化」は良いことを悪いことに置き換えてしまいます。
仕事で成功したにも関わらず、「今回こんなに上手くいったから、あとは悪くなるばかりだ」と考えてしまうのがその典型です。
生きていれば、良いこともあるし悪いこともあります。しかし、良いことがあったから悪いことが起きるのではありません。良いことがあって、油断したために悪いことが起きるのです。
ではなぜ「良いことを悪いこと」ととらえてしまうのでしょう?これは、「自分への自信のなさ」と「言葉の順番」が原因です。
自分を否定すれば、悪いことが起きてもダメージは小さくてすみます。しかし、常にこのように考えていると自分を認められなくなります。
さらにこのマイナス化思考では、「ポジティブ」→「ネガティブ」という並び順が見られます。「良いことがあったから悪いことが起きる」「褒められたから叱られる」などです。
改善するには
まずは、自分を「ほめる」ことから始めてみましょう。
「朝、いつも通りに起きた」「仕事にちゃんと行った」などの小さなことでも、自分をほめることが、自分自身を認める考え方につながります。
また、言葉の順序を入れ替えることもポイントです。
「次は失敗するかもしれないけど、今回は成功したからよし」「家事は苦手だけど、料理は人並みにはできるから大丈夫」というように「ネガティブ」→「ポジティブ」に変えることでマイナス化のクセから脱却することができます。
今回は、前編として4つの「ゆがみ」と改善方法を紹介しました。後編の4つは以下の記事をご覧ください。