うなされる夢をみるのはこころに問題があるから?
怖い経験や辛い思いをした夜に悪夢を見ることは、よくあることです。特に経験の少ない子どものうちは、よく悪夢を見ます。
そして大人になるに従って、悪夢は減っていきます。そのため、悪夢を見ると「良くないことが起きるのかも」「心の病気かもしれない」などと、不安になる人も少なくありません。
しかし、一般に、成人の約半数が時々悪夢を見ると言われており、決して珍しいことではありません。
確かに、ストレスや病気、過去の経験などから来る「未来への警鐘」の場合もあります。しかしそれ以外にも、就寝前の行動や就寝姿勢が原因となっていることもあるのです。ほとんどの場合、悪夢は眠りの質が悪いためだと考えられます。
とは言え、一晩に何度も悪夢をみる、4日5日と続くような場合には睡眠障害が疑われますから、一度、精神科医か睡眠専門医に相談することをおすすめします。
悪夢の原因は?
夢を見るメカニズムはいまだ不明確な部分が多く、夢を見る理由についても解明されていません。しかし、悪夢の原因になるものは分かっています。
【精神的な問題・心の病気】
心的外傷後ストレス障害(PTSD)では悪夢が特徴的な症状として現れます。また過度なストレス、不安や心配事が長期化している場合、自律神経失調症、うつ病も原因となりえます。
【病気】
慢性疲労症候群、睡眠時無呼吸症候群、風邪などでは悪夢を見やすくなります。
【薬の副作用】
抗うつ剤、睡眠導入剤、抗アレルギー剤、麻酔薬などは副作用として悪夢を見ることがあります。また、抗うつ剤、睡眠導入剤を急に中断したり、長期的に飲酒や喫煙を習慣化していた人が禁酒・禁煙をすると、悪夢を見ることがあります。
【就寝前の食事】
就寝前に食事をすると、胃に血液が集中し、睡眠時に脳が十分な活動ができなくなり、悪夢を見ることがあります。また、刺激物(唐辛子、アルコール、カフェインなど)は交感神経を興奮させ、眠りを浅くし、悪夢の原因になります。
【就寝姿勢】
うつ伏せ寝や高すぎる枕が原因で呼吸が阻害されると、酸素の供給が低下し、睡眠レベルが下がります。そうすると、肉体的な苦しさと精神的な死への恐怖で、悪夢が生じます。
悪夢を見るのは眠りが浅い時間
睡眠は二種類の状態で構成されており、約90分の周期を4~5回繰り返します。
体が休息状態なのに対して、脳が覚醒に近い状態にあり、急速な眼球運動が行われている状態をレム睡眠と言います。眠りが浅い状態です。
逆に、体も脳も休息している眠りの深い状態をノンレム睡眠と言います。
睡眠とは、体の修復を行う役目を担っています。
ノンレム睡眠の状態の時には、生理的機能が低下し、一日に必要な成長ホルモンが放出されて、全身の臓器や細胞などの修復が行われます。
一方、レム睡眠中は、記録や感情的な経験に関係する脳のいくつかの部位で、血流が急激に高まることが分かっています。さらに、記憶に関与するアセチルコリンの分泌にも大きな変化が見られます。このため、レム睡眠時には、記憶や感情の強化を行っていると言われています。
- ノンレム睡眠時(深い眠りの時):全身の修復が行われる
- レム睡眠時(浅い眠りの時):記憶や感情の強化が行われる
では、悪夢はいつ見るのでしょう。それは、浅い眠りの「レム睡眠」の時です。
夢のメカニズムや夢を見る理由についてはいまだ解明されていませんが、夢を見るのがレム睡眠中であることから、記憶や感情とのつながりがあると考えられています。
悪夢とさよならする方法
悪夢を見ないために大は、「原因を解決する」ことが大切です。
精神的な問題に心当たりがない場合
悪夢の原因が精神的な問題でないなら、就寝前の飲食や就寝時の姿勢に注意してみましょう。
枕が高すぎると気道が圧迫され、呼吸がスムーズにできません。枕の高さを変えることでも効果が期待できます。特に体重が増えた時などは、枕の高さを変えることで夢見が改善されることがあります。
また、悪夢は眠りの質の低下によっても、起こりやすくなります。この場合、適度な運動が、質の良い睡眠を得るのに高い効果があります。週3回、1回30分~1時間の運動をすると効果的です。
運動は、身体を鍛えるだけでなく、脳と体の疲労バランスをとる、ストレスの解消、眠りを深くするなど精神面にも大きな効果があります。運動習慣のない人はウォーキング、ラジオ体操、ヨガなど自宅でできる運動を生活習慣に組み込むことをおすすめします。
精神的な問題に心当たりがある場合
悪夢の原因が精神的な問題なら、まずは問題の解決に取り組みましょう。自分一人で解決できない問題は、信頼できる上司や同僚、友人や家族などの身近な人に相談すると良いでしょう。完全な第三者かつ味方であるカウンセラーなどに相談するのも効果的です。
また、ストレスコーピング(ストレス対処法)の幅を広げると、ストレスに強くなります。
ストレスコーピングについては以下の記事で詳しく説明しています。