眠れない時、病院の選び方と基準-治療はどんなもの?
深い悩みや強いストレスを感じると眠れなくなるのは自然なことです。しかし大抵の場合は、2~3日すれば体の基本的な働きによって治まるような、一時的な不眠症状であることも事実です。
ところが、過度のストレスや継続する悩みがあると、精神の修復が追いつきません。このような時、眠れない状態が長期に亘る場合があります。
また、本来は一時的なものであったのに、一度眠れない状態が続いたために自ら「眠れないかもしれない」という新たな不安を作り出すこともあります。
一過性の不眠の場合、長くても1週間くらいで、ある程度決まった時間に眠気を感じる状態に戻ります。
しかし、
- 1週間以上、2週間を過ぎても眠気が訪れない。
- 眠っても何度も目が覚める。
- 眠りが浅く早朝に目が覚める。
睡眠は、日中に疲れた肉体、精神、脳などの器官や機能を修復し改善するという大きな役割を果たしています。
ですから、疲労回復のために必要な睡眠が不足すると、「頭が働かない」「体がだるい」などの肉体症状だけでなく、精神面にも大きな影響を与えてしまうのです。
特に「気分低下」「憂うつ」「過度の不信感」などは、気分障害からうつ病、双極性障害などにつながります。
2週間以上の不眠は要注意
不眠症は、大きく分けて3つのカテゴリーがあります。
- 「入眠障害」
眠ろうとするのに寝付けない。 - 「早朝覚醒」
何時に寝付こうと、意志や疲労の度合いとは無関係に、早朝4~5時には目が覚めてしまう。 - 「熟眠障害」
途中で何度も目が覚め、眠っても眠った気がしない。目覚めに疲労感を感じる。
こうした、睡眠に関する問題が2週間以上続くようなら、受診を考えた方が良いでしょう。もし、1ヶ月以上続いているようなら、早急に受診し、薬理療法などの治療を受けることをお勧めします。
主な不眠の治療方法
1.薬理療法(薬による治療)
現在、病院で行われている不眠症の治療は、主に「薬理療法」が中心です。
不眠症の治療は、薬物療法が中心になります。入眠障害、熟眠障害、早朝覚醒などの症状に合わせて、超短時間型、短時間型、中間型、長時間型の適切な睡眠薬を選択して内服します。
出典:新宿駅前クリニックHP
「睡眠のリズムを取り戻すための薬でのサポート」として、睡眠薬・睡眠導入剤が処方されます。他にも、状態に合わせて不安や気力低下に作用する薬が処方される場合もあります。
睡眠薬の服用というと「依存性があるのではないか?」「副作用が怖い」などと、不安に感じる方も多いようです。確かに20年くらい前の睡眠薬は強い副作用や高い依存性がありました。
しかし、現在処方される睡眠薬は極めて副作用の少ないものが主流です。
ただし、もちろん医師の指示に従って、過剰摂取や自己判断での中断はしないことが重要です。誤った服用の仕方や長期間の服薬など、場合によっては精神的な依存の問題などを引き起こすため、注意が必要です。
2. 不眠の根源へのアプローチ
睡眠薬は、あくまでも睡眠のリズムを改善するためのサポートです。不眠の原因に直接働きかけるものではありません。
特にストレス性の不眠を改善・解消するには、根源となる原因の解決が重要であることが医師の間でも広く認知されてきています。
不眠はその原因の治療が大切なんですね。だから「眠れないから睡眠薬」という短絡的な考えは危険であると私は断言できます。詳しい問診と診察、時には検査によって初めて不眠に対し有効な治療が行えるのです。要するに原因によって薬の内容が変わってくるわけで、不眠=睡眠薬という公式は必ずしも成り立ちません。
出典:酒井病院HP
不眠の悩みに対応するのは何科?
不眠の悩みは、一般的に精神科・心療内科で対応しています。抵抗があるなら、内科を受診してもある程度の対処が可能です。
具体的にどのような治療が受けられるかみていきましょう。
内科
精神科などに抵抗があるなら内科で相談してみましょう。かかりつけの病院なら、既往症なども併せて診断してもらえるので安心です。
また、検査によって内臓や血液などの疾患の可能性を判断できます。
ただし、内科医は身体疾患が専門です。改善への進展がしにくい、身体疾患がないなどの場合は、心の専門家への紹介状を書いてもらうなど、次の段階へのきっかけとするのが良いでしょう。
精神科・心療内科
ストレスや心の問題から発生する不眠の専門家です。不眠が心と関係している場合の、薬の処方や不眠原因への対処に大きな期待がもてます。
しかし、医師の主な治療手段は薬理療法です。薬では対処しきれない根本原因の改善は、得意ではない場合も少なくありません。
この、根本原因へのフォローとして、昨今はカウンセラーが常駐している精神科・心療内科も増えています。受診前にカウンセラーの有無を確認するのも良いでしょう。
不眠外来
睡眠に対する専門医が在籍しています。ストレスなどの原因に心当たりがない場合の睡眠障害に最も適しています。
不眠の原因を把握することが大切
不眠には、大抵何かしらの原因があります。そして、原因はひとつとは限りません。
しかし改善するためには原因を特定し、そこにアプローチすることが最も効果的です。
ストレス性の不眠の場合、当人がストレスの原因に気づいていない場合も少なくありません。医師の協力を得て、生活・考え方の見直しを行いストレス性の不眠を繰り返さないようにすることが大切です。