寝ても眠いのはうつ病が原因?ストレスを軽減して過眠を改善
精神的・肉体的に無理をした後や体調が悪い時には、誰でも「普段より長く眠ってしまう」「一日中眠い」「体がだるい」などの反応が起こります。これは体が健康な状態に戻るために休息を必要としているからです。
しかし、無理をしたわけでも病気にかかっているわけでもないのに「寝足りない」「寝過ぎてしまう」という悩みを抱えている方がいます。
眠りすぎる場合に考えられるものとして「過眠症」という病気があります。多くは、思春期前後に発症し割合は600人に1人程度です。
過眠の多くは「うつ病」など心の問題が原因です。うつ病の場合「不眠」症状が一般的でよく知られていますが、「過眠」症状を訴える方も少なくありません。
また過眠症状は、他者から「遊び過ぎ」「怠けている」と思われがちで、そのため悩んでいる当人さえ「自分が悪い」と自責の念にかられます。しかしその背後に「うつ病」が隠れている場合、このような考え方は症状の悪化を招きかねず、注意が必要です。
過眠の原因はうつ病?
過眠に隠れた不眠
過眠を訴える方のほとんどが、実は不眠を併発しています。しかし、本人はそのことに気づいていません。
- 中途覚醒
:夜中に何度も目を覚ます。 - 早朝覚醒
:朝4~6時といった早朝に目が覚める。
このような不眠症状があると、質の高い睡眠を得ることができなくなります。
睡眠の質が低下すると、早寝をしても十分な時間の休息をとっても、心身の疲労が回復しません。疲労回復が十分でないため「寝足りない」「寝過ぎてしまう」という症状が起こるのです。
うつ病の症状は?
病気でない場合の不眠・過眠といった睡眠障害は、主にうつ病が原因です。
うつ病では、気分低下や意欲低下などの精神症状が注目されますが、身体の不調も現れます。一般的に症状は朝が最も悪く、夕方にかけて回復していきます。
- 悲しい・寂しい
- 不安・焦り・イライラ
- 無感動
- 憂うつ
- 意欲低下
- 集中力の欠如
- 決断力・判断力の低下
など
- 不眠・過眠などの睡眠障害
- 疲労感・倦怠感
- 食欲不振
- 月経不順
- 胃痛
- 腰痛・肩こり
- めまい
- 下痢・便秘
など
主として精神症状が現れないため、本人も体調不良程度に考えてしまいがちなのです。これらは、内科で検査しても原因が分からず、薬を服用しても効果がみられないのが特徴です。
過眠以外に抑うつ症状がないからと言って、うつ病の可能性がないとは言い切れません。うつ病の可能性を考慮した対処を考えることが大切なのです。
過眠への対処法
過眠の相談は何科?
過眠の原因は多くの場合、うつ病です。内科を受診するよりも精神科や心療内科といった心の専門医を受診することが改善への近道です。
精神科・心療内科では主に薬理療法(薬による治療)を用いて睡眠の改善を行います。併せて、抗うつ剤などが処方されます。
しかし薬理療法では過眠の原因に直接アタックできません。そのため、軽度のうつ病やある程度まで回復した場合は、薬理療法と同時に心理療法を行う病院が増えています。
薬の服用による治療が行われるほか、生活を改善するための生活指導や、考え方を整理しとらえ直すための心理療法が行われます。とりわけ認知行動療法は薬物療法と同等の効果があることが確認されています。
出典:医療法人和楽会HP
心理療法は主に心理カウンセラーが行います。常駐している病院も増えていますが、心理カウンセラーが必ずいるわけではありません。問い合わせ時に心理療法を受けられるか確認すると良いでしょう。
自分でできる対処法
過眠はうつ病が原因となっていることがほとんどです。そのきっかけは主にストレスです。
ストレスを軽減することで過眠の改善につながることは少なくありません。特に考え方を見直すことは心の負担の軽減につながります。
ストレスになりやすい考え方には「認知の歪み」として定義されたパターンがあります。その中でも特に起こりやすい3パターンをご紹介しましょう。
全か無か(All or Nothing)思考
物事を「白か?黒か?」で考えることです。完璧主義とも言えます。
しかし、人も社会もほとんどが中間のグレーです。「失敗=終わり」ではないし、「断り=全否定」ではありません。
過度の一般化
何か悪いことが起きた時に、また同じことが起こるに違いないという考え方です。
しかし、同じことが起きるという根拠はありません。
べき思考
「~するべきである」「~しなければならない」という考え方です。この考え方は自分を追い込む思考です。この基準に合わないと自己嫌悪、恥や罪の意識を感じます。
「べき」ではなく「~した方が良い」と変えてみるだけでも心にかかる負担は軽減できます。
早めの対策で悪化を防ぎましょう
過眠はうつ病などの心の問題を原因とした精神的・肉体的な疲労の蓄積の場合がほとんどです。睡眠の時間を増やすよりも「睡眠の質を高めること」「ストレスを溜めないこと」が大切です。
規則正しい生活、適度な運動を心がけることは肉体へ作用し、睡眠の質の向上につながります。
そして考え方を見直し、偏りの修正をしましょう。自ら作り出している不要なストレスを解決することで心の負担を軽減できます。
しかし、過眠が長期に渡っている場合は、早めに専門医に相談し、重症化を防ぐように努めましょう。