アルコール依存睡眠障害 – お酒が不眠症を悪化させる
寝つきが悪い時に「お酒を飲むとよく眠れる」と感じている方は多いでしょう。
実際、アルコールには、睡眠薬や麻薬のように中枢神経(脳の神経が集まっている場所)を抑制させる効果があります。これによって、リラックス・睡眠を一時的に促す作用があるのは事実です。
節度をわきまえ、少量のアルコールを飲んでぐっすり眠るという方法は、悪いことではないような気もするでしょう。
しかし、あなたが考えている以上に、アルコールで眠る事はリスクが高いかもしれません。
毎晩のようにアルコールに頼って眠るという方は、アルコールによる睡眠障害を発症している可能性が考えられます。
お酒やビールを飲まなければ眠れないという方はこの傾向が強く、自主的改善や治療が必要な場合があるのです。
アルコール依存睡眠障害とは
アルコールの効果
最初にも書いたように、アルコールには、中枢神経をリラックスさせ入眠を促す効果があります。
しかし、アルコールを摂取すると、同時に中途覚醒(睡眠中の目覚め)が起こりやすくなります。
さらに、長期間に亘る飲酒は、体内でアルコールへの耐性(抵抗性)を作り出していきます。つまり、毎日お酒に頼っていると、時間が経つにつれて、お酒による睡眠の効果が得られにくくなっていくのです。
アルコールに頼って眠ることに慣れてしまうと、寝つきが悪くなる度に毎晩のアルコール量が増えてしまいます。
心当たりがあるという方もおられるのではないでしょうか?
アルコール依存睡眠障害の特徴
アルコール依存によって不眠症の傾向が増していくことを、アルコール依存睡眠障害と言います。この症状は、睡眠障害とアルコール依存症の2つの病気が内在する、かなり厄介な病気です。
寝つきが悪くなる度に、就寝時のアルコールが増えていく。
↓
アルコールへの耐性ができて余計に眠れなくなる。
それぞれの病気が相互に作用することで症状を悪化させてしまうと考えると、これがどれほど危険な病気であるかお分かりいただけるでしょう。
もし思い当たる節があるなら、一度以下のチェックを行ってみて下さい。いずれか1つでも当てはまる場合、アルコール依存睡眠障害(または予備軍)の可能性が考えられます。
- 眠れないという理由から、30日以上アルコールを飲み続けている。
- 睡眠のためのお酒の量が徐々に増えている。
- やめようと思っても、眠れないことを考えると不安で止められない。
急な断酒は離脱症状を引き起こす
当然ながら、アルコール依存睡眠障害を改善する一番の方法は、就寝前の飲酒を止めることです。
しかし、すでにアルコール依存の状態にある方が急に断酒をしようとすると、離脱症候群(いわゆる禁断症状/離脱症状)を引き起こすことがあります。
アルコールや麻薬に依存している方が、急にこれらを止めようとした際に禁断症状があらわれるという話は、聞いた事があるでしょう。
アルコール依存睡眠障害も、基本的にはアルコール依存症と同様に、急に断酒をしようとすると中枢神経が異常な症状を引き起こしてしまうことがあるのです。
断酒による離脱症候群の症状
- 不眠症の悪化
ひどい症状の場合は..
- 興奮
- けいれん
- 発作
さらに重篤な場合は..
- 幻覚
- 幻聴
アルコール依存睡眠障害の治療
アルコール依存睡眠障害は、その他の睡眠障害とは違い、アルコール依存症を併発するという特異な症状が見られます。
ですから、治療には、精神療法や薬物療法の専門知識が必要になります。薬物療法では、睡眠薬、精神安定剤、場合によっては抗うつ剤の投与などが必要となることがあります。
また、症状が重度になる程、治療が長引くことが予想されますし、生活習慣の改善が必要となる場合もあります。
眠るために睡眠時に多量のお酒を飲むことは、健康面では非常にリスクが高いという事が分かっています。
酒は百薬の長とも言いますから、毎日の習慣になるような飲み方は避け、眠る前の3時間前くらいまでを目安に、節度を持った少量のお酒を飲む程度にしておくと良いでしょう。