睡眠障害とは – 分類と症状

眠れない症状の不眠症や、寝過ぎてしまう過眠症

睡眠のことで悩んでいる人の中で、睡眠障害について詳しく調べた事のある方はどのくらいいるでしょうか。睡眠障害と聞くと、なんだか難しそうですし、不眠症とは別の症状の事かと考えている人も居るかもしれません。

睡眠障害とは、睡眠に関する様々な症状をひっくるめて、そのように呼ばれているのです。

・睡眠障害
睡眠障害とは、不眠症や過眠症などを含む、睡眠に関する多様な病態の事を指しています。

近年は、精神病や睡眠障害の病院の敷居も下がってきています。眠れなければ、心療内科や精神科などの病院へ行けば、比較的簡単に睡眠薬をもらう事ができます。
しかし、本当に大切な事は、自身の睡眠障害がどのような症状で、どの程度深刻なものなのか。原因はどこにあるのかを知ることです。

ところで、睡眠障害が「睡眠に関する障害全般」を指しているなら、不眠症過眠症はどのような症状の事を指しているのでしょう。

・不眠症
眠るべき時に、眠るべき場所で満足な睡眠をとる事ができない症状。

・過眠症
眠ってはいけない時に、眠ってはいけない場所で眠ってしまう症状。
※いずれも、睡眠障害に含まれる症状。

ここから、睡眠障害にはどのような分類があるのかについて、大まかに説明していきます。
睡眠障害は、分類すると大まかに4つの症状に分けられます。この分類は「睡眠障害国際分類」と呼ばれ、国際的に共通性のある分類です。

2005年に改訂された物ですが、睡眠障害はまだまだ未知の部分が多く、この分類も常に改訂を重ねています。睡眠障害は複雑な障害のため、現在でも明確に分類されていない症状も存在します。

前置きが長くなりましたが、以下に大まかな睡眠障害の分類をまとめてみました。
自身の睡眠障害がどこに位置するのかが把握できれば、治療の必要性や改善方法の判断がつけやすくなるかもしれません。

睡眠障害の、大きな4つの分類 – 睡眠障害国際分類 第1版

上記の4つの大きな分類に付随して、ここからいくつかの下位分類に分けられます。
さらに、様々な疾患・病態へと派生していきます。以下がその詳細です。

1.睡眠異常

不眠症や過眠症など、いわゆる「睡眠の病気」としてイメージされている障害といえば、この睡眠異常が多いでしょう。

睡眠異常は、その疾患の原因に関連して、さらに以下の3つに分けられてます。

1-1.内在因性睡眠障害

患者さん自身が抱える、何らかの病気によって引き起こされる睡眠の障害の事を指しています。代表的なものとして、ナルコレプシー睡眠時無呼吸症候群など、近年注目されている睡眠の病気もこれに含まれます。

無理に眠ろうとすることが精神的な負担になって眠れない、精神性理性不眠症。本当は眠れているのに眠っていない気がする、睡眠状態誤認などの病気もここに含まれます。
その他にも、特発性不眠症ムズムズ脚症候群周期性四肢運動障害といった、比較的新しい睡眠の病気もこれに含まれています。

1-2.外在因性睡眠障害

内在因性睡眠障害は、患者さんの個体内に原因が存在するものです。
それとは対照的に、環境や薬物などの外的な要因が障害を引き起こすのが、外在因性睡眠障害です。

分かりやすい例を上げれば、酸素濃度が低下することによって引き起こされる高地不眠症。食べ物や薬、アルコールの摂取などが原因で起こる不眠症も、外在因性睡眠障害に分類されます。
生活習慣に何らかの原因がある場合や、生活環境が変わる事によって引き起こされる適応性睡眠障害なども、分かりやすい例と言えるでしょう。

1-3.概日リズム睡眠障害

概日リズムの詳しい説明については、別途ページで詳細を解説をしますので、ここでは簡単な説明に留めます。
人間にはおよそ24時間を1つの周期として認識する、体内時計が備わっています。このリズムが、何らかの要因で正常に働かなくなり、睡眠に異常をきたすのが、該日リズム睡眠障害です。

海外旅行で時差が生じ、睡眠に支障をきたす帯域変化症候群(いわゆる時差ぼけ)は、一時的に起こる概日リズム症候群のひとつです。
シフト勤務などによって睡眠時間が前後する事で、持続的な概日リズム症候群に陥る症状(睡眠相後退症候群)もあります。

2.睡眠時随伴症

睡眠時随伴症は、ほとんどの場合、乳幼児から思春期にかけ、脳が発達する過程において起こる症状です。
最近では、高齢者の脳が退行する時期に起こる事も明らかにされました。

睡眠時随伴症は、睡眠時の異常行動や異常現象をほぼ含んでいます。具体的には以下のような症状として表れます。

2-1.覚醒障害

夢遊病や、夜驚症といった症状を挙げればイメージが湧きやすいと思います。
こうした症状は多くの場合、睡眠から覚醒への移行段階に見られます。特に幼児期にあらわれやすいのは、脳が発達段階にあるためです。

夜中に突然叫び声をあげたり、大声を出す夜驚症(睡眠時驚愕症)も覚醒障害の一種です。やはり子供に多い症状ですが、高齢者にもみられる事があります。酷い症状になると、起き上がったり、居合わせた人に暴力を振るう事さえあります。

2-2.睡眠覚醒移行障害

寝言やひきつけ(けいれん)などに代表される症状です。
これらも子供に多い症状です。睡眠時に覚醒から睡眠へと移行する時間。または、レム睡眠とノンレム睡眠を移行する際に、こうした症状を引き起こします。

律動性運動障害と呼ばれる、身体を激しく動かす行動など、側で見ている家族は非常に不安になりますが、幼児期のケースでは脳の発達と共に自然と症状が治っていくのが普通です。

2-3.レム睡眠に伴う睡眠時随伴症(レム睡眠行動障害)

レム睡眠時は、覚醒している時に近い脳の状態です。夢を見たり、一般に金縛りと言われる症状(睡眠麻痺)が起こりやすいのもレム睡眠中です。
この時、夢に見ていた通りの寝言や、異常行動を起こす事があります。時に、布団から起き上がって動き回ったり、暴力的な行動を起こす事もあります。

こうしたレム睡眠時に起こる異常行動の事を、レム睡眠行動障害と呼びます。この症状は、日中は何の問題もない、中高年や高齢者に多く見られる事があります。

3.内科・精神科的睡眠障害

主に、精神病や神経の疾患に伴う睡眠障害は、この分類に含まれます。
いわゆるうつ症状に伴う睡眠時間の乱れや不眠症など、精神の症状に伴う睡眠障害は、一般的な臨床として近年増加傾向にあります。

内科・精神科的睡眠障害は、主に以下の3つに分類できます。

3-1.精神障害に伴うもの

精神病や気分障害は、睡眠障害を引き起こす要因としては多く認められている症状です。
主な症状として、操うつ病やパニック障害に伴ってあらわれる睡眠障害や、アルコール依存症が原因の場合もここに分類されます。

3-2.神経学的障害に伴うもの

パーキンソン病やアルツハイマー病、認知症などに伴う睡眠障害がこれに含まれます。
神経学的な障害や、中枢神経の疾患は、時に睡眠障害を引き起こす原因となるのです。

3-3.その他の内科的疾患に伴うもの

主に内科の疾患が原因となり、睡眠障害を引き起こす場合はここに分類されます。
稀な例ですが、感染すると睡眠サイクルに障害を引き起こす、睡眠病と呼ばれる病気は分かりやすい例です。

夜間心虚血や、睡眠関連喘息など、間接的に睡眠を阻害する内科的な疾患も含まれます。

4.その他(提案検討中/未分類の睡眠障害)

最初にも触れた通り、睡眠障害の中には、未だに分類が明確では無いものも多数存在します。
中には、長時間睡眠や短時間睡眠の症状など、明らかな睡眠障害も含まれています。診断分類はその時代に沿って、常に改訂され続けています。

睡眠障害の原因を見極める

以上のように、睡眠障害と一言で言っても、眠れない原因や睡眠時の異常行動は様々な要因が考えられるという事が分かっていただけたのではないでしょうか。逆に考えてみると、眠れない事には何らかの原因があるという事です。

なぜ眠れないのか、その原因を見極めれば、それについての対策を立てる事ができます。
もちろん、自分ではどうしようもない場合は、病院へ相談するべきです。その反対に、いくら睡眠薬を飲んでも根本的な解決には繋がらないようなケースも、場合によってはあるという事が、お分かりいただけたでしょうか。

眠れない原因が精神的な症状にあるのか、内在する疾患によるものなのか。もしくは、睡眠サイクルの乱れに伴うものなのか。
症状と原因を自身で見極めることによって、睡眠専門の外来を受診すべきか、または呼吸器科や精神科などの外来を受診すべきか、判断が付けやすくなるはずです。

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