睡眠薬を飲んでも不眠が治らない時、どうすればいい?
仕事や家事・育児に忙しく、体も疲れているはず・・・
なのに、眠ろうとしても眠ることができない。そのような悩みを抱えていらっしゃる方が多くいます。
厚生労働省の『平成25年 国民健康・栄養調査報告』の睡眠の質の状況に関する項目では、男女ともに「日中、眠気を感じた」との回答が最も多く、次に「睡眠時間が足りなかった」と回答しています。
特に、女性の割合(女性3,812人中)は比較的多く、男性の23%に対し27.8%もの人が「寝不足」と感じていることが分かります。
「画像:第3部 生活習慣調査の結果 より抜粋」
引用:厚生労働省 平成25年 国民健康・栄養調査報告
第80 表 睡眠の質の状況より
一般的に、不眠の治療には睡眠薬を用いるのが普通です。しかし、なるべくなら睡眠薬に頼らずに不眠を改善したいと考えている方が多いのではないでしょうか。
薬に頼らず不眠症を緩和する
医療機関を受診しなければならないほどの重症ともなれば、「薬を飲まない」という選択は難しいかもしれません。ただ、症状の軽い・重いを問わず、自身でできる範囲で、不眠症のケアを実施するということは、状況を悪化させないためにも重要なことです。
以下に、自分で実施できる不眠の症状を緩和するための方法の一部をご紹介します。
正しい知識を得る
間違った知識の元で対策を実施しても、逆に悪化させてしまう可能性さえあります。服用している薬剤の正しい使用方法を含め、不眠の原因を確認し、正しい知識を持って対処しましょう。
不眠症の原因は、人によって様々です。近年特に多い原因として、長期的なストレスによる「自律神経の失調」が挙げられます。十分な睡眠をとったはずなのに、朝からぐったりと疲れているような場合、自律神経が原因かもしれません。
● 自律神経の不調
生活のリズムは自律神経に影響します。通常、日中は交感神経が働き、夜の睡眠時は副交感神経が働きます。自律神経の働きが何らかの原因で乱れることで、眠ろうとしても眠れない原因となってしまうのです。
夜遅くまで仕事をしたりパソコンやスマートフォンなどを使用して、副交感神経が働く時間になっても明るい状態の中で起きていると、いつまでも交感神経が働いてしまいます。そのため、眠ることが難しい状態になるのです。
● 長期的なストレス
育児や家庭での心配事、仕事上の不安、職場での人間関係など、様々なストレスがあります。これらのストレスが解消されず長期に亘る場合、眠りを調整している自律神経の機能不調につながります。
長期的ストレスからの不眠
なぜ長期的なストレスが不眠の原因となるかというと、ストレスに対応するために、副腎皮質ホルモンの分泌が増加して交感神経が活性化するためです。
また、長い間アクセル全開で車が走り続けることができないように、交感神経をフル回転させ続けることは副腎疲弊を招きます。
さらに、交感神経が活性化している時は、消化器官の正常な働きを乱すこともあります。消化・吸収に影響があり、栄養が十分に吸収できなくなったり、ホルモン生成に必要な栄養分・成分の摂取にも影響します。
このように疲労が蓄積するに伴い、脳内のセロトニンやノルアドレナリンと呼ばれる神経伝達物質が減少します。セロトニンは朝の覚醒を促し、睡眠ホルモンであるメラトニンへと変化しますので、このセロトニンが不足すると慢性的な不眠にもつながりやすくなるのです。
睡眠薬はずっと飲んでも良いの?
仕事や家事・育児などがあり、どうしても寝不足は困る。そのような理由で睡眠薬を処方してもらったり、市販薬を服用されている方も多いでしょう。
しかし、気が付いたら「かなり長期的に服用している」ということはありませんか?
睡眠薬などの薬に頼り過ぎると、薬物依存症になってしまう場合もありますから注意が必要です。
薬物依存症とは?
睡眠薬を服用することによって、精神的・身体的な作用が得られます。
これが続くと、自分の意思ではなく、脳が薬を要求するようになります(精神的な依存)。薬を飲まないと、不安感が増加したり、イライラと落ち着かなくなり、飲まずにはいられない気持ちになってしまうのです。
こうなると、不眠というよりは精神的な薬物依存状態と言えます。
ストレスや不眠に対処する
ここまで、原因や症状などを中心に見てきましたが、不眠やストレスに対して、日ごろからできることはないでしょうか。
注意したいことや、簡単に実施できることを中心にご紹介してみます。
ストレスが溜まりやすい性格はあるの?
そもそも、ストレスが溜まりやすいことは、性格に関係あるのでしょうか?
もちろんあります。自分がどのような事でストレスを感じやすいのか、きちんと把握し、ストレスを多く溜めないよう行動することが大事です。
● 真面目で責任感が強い方
日本人に多いと言われている「真面目で責任感が強い性格」はその1つ。
忙しくて辛い状況でも、ついつい頑張ってしまうという傾向があり、多少の不調があっても最後までやり遂げようとします。このような無理が、精神的なストレスとなってしまいます。
● 気配り上手な方
「気配りの上手な人」は、多くの気遣いによって、ストレスを溜め込みやすいと言えます。特に、無神経な人などが周囲にいると、強いストレスを感じる場合があります。
性格を変えることは簡単ではないかもしれませんが、日常のちょっとした工夫で不眠を解消する方法もあります。
不眠の原因を軽減する
● 毎日同じ時間に起きる
自律神経の狂いを起こさないように、休日も同じ時間に起きるようにします。休みの日に長く寝ることや二度寝することはやめましょう。
規則正しい生活は、何事にも基本となります。朝日を浴びることで、体内時計をリセットしますので、休みの日であっても同じ時間に起きるようにしましょう。
● 適度な運動
毎日適度な運動をすることは、ストレスの解消や不眠に効果があります。
そんな時間は無い!というような方でも、深呼吸をするだけでも効果がありますので、毎日数分だけでも実施してみてください。深呼吸はセロトニンを増加させる効果がありますし、リラックスできます。
● 趣味
日常の嫌な事を忘れるには、楽しい時間、自分が熱中できることをする時間が必要です。そのような時間を持つことでストレスを解消できます。
● 食事
食事は何事にも基本です。忙しいからといって、栄養のないものばかりで手軽に済ませず、規則正しく、バランスを考えて摂るようにしましょう。
また、就寝3時間前の飲食は控えましょう。消化器官に食べ物があると寝つきに影響します。
● リラクゼーション
1日の中でゆったりと落ち着く時間を確保したいですね。少し長めの半身浴や、好みのアロマを使う、好きな音楽を聴く、そのような時間を設けてリラックスする時間を作りましょう。
ちなみに、就寝の1時間前までには入浴は済ませておきましょう。寝るためには体温を上げる必要があるのですが、体温が高いままでは寝つきに影響します。
● 声を出す
大声を出すことはストレス解消になります。もちろん、家で叫ぶというのは考え物ですので、カラオケに行ったり、友達とワイワイ話す、そのような時間を作って、笑ったり、喜んだり、感情を出せる時間を作りましょう。
● ストレス源を回避
これは解消方法ではありませんが、ストレスの元になっているものから遠ざかることができれば、ストレスが溜まりません。
育児や仕事を放棄することはできませんが、誰かに相談したり助けを求めるなど、なるべくストレスにならない方法が無いか探してみることも必要です。
● 睡眠の質を上げる
ただ眠れば良い、というものではありません。途中で起きることなく朝まで熟睡できることが理想です。
睡眠は身体や脳の疲れを解消するために必要です。睡眠中に溜まったストレスなどが解消されるので、必要なホルモンが不足しないようにする必要があります。ぐっすりと眠って快適に目覚められれば、一日も快適に生活できます。
規則正しい生活と、バランスの取れた食事、適度な運動、この三つが基本です。
さいごに
いかがでしたでしょうか?ストレスが心や眠りに悪影響がある、ということがお分かり頂けたと思います。
ストレスを解消することと、日ごろの規則正しい生活が何より必要です。朝快適に目覚めて、美味しく食事ができ、夜眠くなったら寝る。そのような普通の生活を継続するためにも、上手にストレスを解消し、薬に頼ることなく過ごしたいですね。