眠いのに眠れないのはなぜ?原因と対処方法
睡眠時間が短かったり、残業で体は疲れているはずなのに、布団に入ると眠ることができない。
眠いのに、何故かぐっすり眠ることができずにいる。明日も早く起きなければいけないのに、、
人間の体には、恒常性と呼ばれる機能が備わっています。寝不足が続いたり疲れが溜まったりすると、恒常性によって自然と眠気が強くなり、眠らずにはいられなくなります。
しかし、中には寝不足が続いていても、疲れが溜まっていても、なぜか眠れないという方がいます。一体なぜでしょうか?
なんらかの病気に起因する場合を除いて、眠いのに眠れない原因には、ストレスや生活習慣が考えられます。
本稿では、ストレス、生活習慣による不眠の原因と、対処方法についてまとめてみます。
眠りたいのに眠れない原因とは
1. ストレスが原因に
ストレスを受けると、睡眠に問題が起きやすくなります。ストレスの影響を強く受けるのは、主に「脳」と「自律神経」です。具体的に、睡眠にとってどのような悪影響を及ぼすのか見ていきましょう。
ストレスホルモンの働き
ストレスを感じると、脳はストレスの影響から心身を守るために、指令を出します。この時に放出されるストレスホルモン、コルチコトロピンには、睡眠を抑制する作用があります。
さらに、興奮物質であるノルアドレナリン、ドーパミンなどが分泌されます。これにより、大脳が興奮状態を作り出し、脳は休めない状態に陥ります。
自律神経の働き
自律神経は、長期に渡るストレスや、過度のストレスに影響を受けやすいという特性があります。ストレスの影響を受けると、自律神経のバランスが崩れてしまい、活動と休息のバランスを崩しやすくなります。
具体的に、自律神経の働きについて説明していきます。
私たちの体は、自律神経の働きによって、生命を維持するための様々な活動を自動的に行っています。自律神経は、交感神経と副交感神経と呼ばれる、2つの神経を交互に働かせることによって、活動と休息を繰り返し行っています。
これは「生体リズム」としてプログラムされています。この生体リズムが狂うことで、睡眠に大きな影響が現れるのです。
自律神経の働き(生体リズム)
- 交感神経(活動のための神経)
覚醒時や、怒り・恐怖・不安・緊張などを感じた時に働く - 副交感神経(休息のための神経)
リラックスしている時や、睡眠中に働く
自律神経は、これら2つの神経が交互に働くことによって、生体リズムを整えている。
人は、ストレスを受けると、それに抵抗するために交感神経が活発化します。そうすると、本来睡眠に必要な副交感神経の働きが阻害されてしまうのです。
副交感神経は、休息を目的としているため、働きが阻害されると睡眠にも障害が起こります。
2. ストレスの不眠に対処するには
眠れない原因がストレスにあると分かっているのなら、ストレスを解決することが第一の根本解決につながります。ストレスを解決する方法には、以下の2つが挙げられます。
2-1. 問題を解決する
一つは、ストレスの原因である問題を解決することです。まずは、問題を解決するためにできることを考えてみましょう。
2-1-1. 物事の捉え方を変える
ストレスを感じやすい人には、偏った考え方をする人が少なくありません。物事の捉え方を変えてみましょう。
以下の記事では、ストレスを作り出す考え方と、その対処方法について説明しています。ストレスを感じやすいという方は、参考にしてみてください。
すぐに効果が出るわけではありませんが、続けることでストレスと感じることが減少します。
2-1-2. 人に頼る
自分で解決できない問題は、解決できる人の力を借りましょう。
人に頼るのは甘えだと我慢する人が多くいますが、自分で解決できる問題ならストレスにはなりません。
自分で解決できない問題で人に頼るのは、「甘え」ではないと認識しましょう。
2-1-3. 誰かに話す
人を相手に話すのなら、気の置けない友人や家族に話しましょう。すぐに話せる相手がいないなら、ペットやぬいぐるみ、冷蔵庫などでも構いません。
ここで大切なのは「相談をする」「答えを求める」のではなく、「話を聞いてもらう」ことです。
話すこと自体がストレスの発散になりますが、意見されると新たな問題を生じる場合があるからです。
また、話すことで自分の不快な気持ちを引き起こした「本当の原因」に思い当たることも少なくありません。本当の原因が分かると、意外にも心はすっきりとするものです。
2-2. ストレスを解消する
もう一つは、ストレスを解消することです。ストレスの原因がすぐに解決できないのなら、眠る前に心の負担を少しでも減らし、リラックスするように心掛けましょう。
次のような方法は、ストレスの解消に効果的です。
2-2-1. 香り
香りには、心身をリラックスさせる効果があります。睡眠前にアロマオイルなどを焚いて、リラックスできる時間を作ると良いでしょう。
適しているものとして、ラベンダー、カモミール、オレンジなどがおすすめです。
2-2-2. 軽い運動
有酸素運動には、ストレスホルモン、コルチゾールの分解を促進する効果があります。
ウォーキングのように一定のリズムで体を動かす動作は、リラックス作用を持つセロトニンが分泌されるため、イライラや不安が抑制されます。
ヨガや静的ストレッチも、リラックス効果の高い運動です。
2-2-3. 入浴
入浴は、リラックスを促進する副交感神経の働きを促します。副交感神経が適切に働くことで、夜の時間に眠気が誘発されるようになります。
入浴の方法として、38℃~40℃のぬるめのお湯に、時間をかけてゆっくりと浸かると良いでしょう。血液循環が良くなり、筋肉の緊張やコリが和らぎます。
お湯から上がった後、体温が低下するにつれ、眠気も訪れます。布団に入る1時間前くらいを湯上りの目安とすると良いでしょう。
3. 生活習慣の乱れが原因に
眠いのに眠れないもう一つの原因として、生活習慣が考えられます。
私たちの体は、本来、日が昇れば活動的になり、沈めば休息できる体勢に入るようプログラムされています。しかし、このリズムを正しく作動させるには、自律神経の働きや内分泌ホルモンが適切に分泌され、働くことが前提となります。
この、自律神経や内分泌ホルモンを正常に保つために必要なのが、以下の3つです。
- 栄養バランスの取れた食事
- 適度な運動
- 規則正しい生活リズムの維持
次の項目で、生活習慣による不眠に対処する方法を詳しく説明していきます。
4. 生活習慣の乱れに対処するには
4-1. 栄養バランスの取れた食事
自律神経や内分泌ホルモン、さらに細胞などを作る原料は栄養素です。
栄養素の過不足はただちに体の不調につながるわけではありません。しかし、過不足が続くと自律神経の乱れを引き起こし、必要な内分泌ホルモンの合成が行えなくなります。
不眠と食事に相関関係があるとは考え難いかもしれませんが、バランスの良い食事を心掛けることが、不眠の改善には欠かせません。
4-2. 適度な運動
適度な運動は、自律神経を活性化させ、ホルモンバランスを正常に整える効果があります。また、ストレスの解消、睡眠の質の向上にも効果的です。
ただし、一時的な運動ではあまり効果がありません。習慣的に運動することが大切です。
仕事や家事など、日常の動きと「運動」は全く別物です。例え日頃から家事などで体を動かしていたとしても、別の時間に適切な運動の時間を確保しましょう。
眠りの質を悪化させる原因となるものは、副交感神経の抑制、睡眠ホルモンメラトニンの減少です。
これを改善するのに有効なのが、ウォーキング、水泳、サイクリングなどです。これら中程度の負荷がかかる運動を、週3回、30分程度行うことが有効であることが分かっています。
4-3. 規則正しい生活リズムの維持
初めにも述べたように、睡眠に影響を与える自律神経は、活動を促す交感神経と、休息を促す副交感神経で成り立っています。この二系統の神経が自動的にバランスを取ることで、私たちは健康な生活を送ることができます。
そのため、夜更かしや不規則な食事で生活リズムが乱れると、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかなくなります。そして結果として、以下のような不調が起こってしまうのです。
- 不眠
- 寝起きの悪さ
- 抵抗力の低下
- 精神的不調など
生活習慣が乱れれば、必然的に生体リズムが崩れ、睡眠の質も低くなります。日頃から規則正しい生活習慣を心がけるようにしましょう。
5. 睡眠を整えるためのポイント
眠れない原因がストレスか、生活習慣かによらず、大切なのが睡眠環境です。ポイントは4つです。
5-1. 整理整頓
眠っている間も、脳は活動しています。そのため小さな物音や光でも察知し、危険から身を守ろうと反応してしまいます。
ベッドや布団の周りには、極力物を置かない方が良いでしょう。
5-2. 清潔な寝具
睡眠中は体温を調節するためにコップ1杯分の汗をかきます。寝間着、シーツ、布団、枕カバーは清潔にしておきましょう。
5-3. 適切な温度・湿度
寝室の温度は夏25℃、冬15℃、湿度50%程度が理想です。エアコンを、就寝1時間後にオフ、起床1時間前にオンにセットすると良いでしょう。
睡眠中の体温は低下します。一晩中エアコンをつけっぱなしにすると体温調整がうまくできず、不調の原因になるので避けましょう。
5-4. 光
眠りに必要なのは適度な暗さです。人間の体は明るい時は活動的に、暗くなれば休息へ切り替わるようにプログラムされています。寝室の光が強いと体はリラックスモードになりにくくなります。深い睡眠を得るためにはできるだけ暗い状態にすることが大切なのです。
しかし、真っ暗なのは怖いというのも人の本能です。このような場合は、ほの暗く、何かが見える程度の灯(30ルクス以下)をつけておくと良いでしょう。