ストレスが病気を引き起こす – 対処方法は?
私たちは、常に多様なストレスにさらされています。
しかし、健康であれば、十分な休息や睡眠によってストレスで受けたダメージは修復されます。私たちの身体には恒常性(こうじょうせい)を維持する能力が備わっているからです。
恒常性(ホメオスタシス)とは
生体がさまざまな環境の変化に対応して、内部状態を一定に保って生存を維持する現象。また、その状態。
血液の性状の一定性や体温調節などがその例。動物では主に神経やホルモンによって行われる。
しかし、どんな人であっても、いつまでもストレスに対して抵抗し続けることはできません。抵抗力にも限度があるのです。
過度のストレスや長引くストレスは、抵抗力を弱めます。そのため、体に様々な症状が現れ、場合によっては病気へとつながることもあるのです。
すべてのストレスに対して起こる「ストレス反応」
ストレスを受けると、私たちの体は「ストレス反応」を起こします。
ストレス反応には3段階あり、「警告反応期」 → 「抵抗期」 → 「疲憊(ひはい)期」へと移行します。
警告反応期
警告反応期は、ストレスを受けた直後に現れるものです。警告反応期は、「ショック相」と「反ショック相」の二つに分かれます。
ショック相は、ストレスを受け、一時的な体温、血圧、血糖の低下などを起こします。
その後、ストレスが処理できないほどのものでなければ、反ショック相へ移行しショックからの回復を行います。
抵抗期
抵抗期は、ストレスが続いていても、活性化した抵抗力により均衡(きんこう)を保っている段階です。ストレスを克服したように見える場合もありますが、抵抗力を高めて防御態勢をとっている状態です。
抵抗期は防衛に注力しているため、余力がありません。新たなストレスに抵抗しきれないこともあります。
そのため、この段階で以下のような不調が現れることもあります。
- 身体症状
:睡眠障害、肩こり、頭痛、眼精疲労、便秘、腰痛、胃痛、胸やけなど - 精神症状
:憂うつ、イライラ、焦り、落ち込み、悲しい、寂しいなど
疲憊(ひはい)期
ストレス反応の最終段階です。
この状態では、ストレスへの抵抗力は限界を超えており、恒常性の維持が困難になって生体機能や免疫力の低下が起こります。心身ともに様々な病気が現れ、適切な治療を行わなければ死に至る場合もあります。
ストレスをきっかけに発症する可能性のある病気は以下のとおりです。
- 呼吸器系:気管支喘息(きかんしぜんそく)、過喚起(かかんき)症候群
- 循環器系:狭心症、心筋梗塞
- 消化器系:胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、心因性嘔吐
- 内分泌・代謝系:単純性肥満症
- 整形外科系:腰痛症
- 泌尿器・生殖器系:生理痛、心因性インポテンス
- 眼科系:目瞼痙攣(がんけんけいれん)
- 耳鼻咽喉科系:メニエール病
- 精神科系:うつ病、パニック障害、摂食障害、依存症など
ストレスを感じているのは「脳」
心の病気は、ストレスによって発症する代表的な病気です。
うつ病、不安障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)など、ストレスをきっかけとする精神疾患や神経症は様々です。
なぜストレスによって心身の病気が発症するのかというと、私たちがストレスを感じた時に直接影響を受けているのが「脳」だからです。
脳は生命活動をコントロールする器官です。脳という司令官の指示に従い、各器官では必要なホルモンの分泌、神経伝達物質の合成がなされます。
それ以外にも物事を考える、体を動かす、さらには感情、情動など私たちが「心」と呼ぶものを生み出す働きもしています。
ストレスを受けると脳は・・・
脳はストレスを受けると、ストレスに対抗するための指令を出します。ノルアドレナリンやドーパミンといった興奮物質を放出し、心身を戦闘状態にするのです。
すぐにストレスが解消されれば、戦闘状態も解除され休息モードへとシフトします。そして休息中に、負担のかかった部位への修復が行われます。
過度のストレス、長期間のストレスがあると・・・
しかし、過度のストレスを受けたり、ストレスが長期化すると、脳は戦闘状態を解除することができません。解除できないということは休息をとることができない、すなわち修復が行えないということです。修復しなければダメージは積み重なっていきます。
ダメージが重なるとストレスへの抵抗力も弱まります。その後に起きるのは脳、神経、内臓など各器官の機能不全です。
うつ病に代表される心の病気は、脳の機能不全によるものなのです。
ストレスに対処するには
私たちは、常にストレスにさらされています。温度差、騒音など外部からの刺激によるストレス、IT機器の使用によるテクノストレス、人間関係や経済活動の変化による社会的ストレスなど、ストレスの種類は様々です。
しかし、心身に影響を与えるほどのストレスは限られており、主な原因は「人間関係によるもの」と「本人の考え方や性質によるもの」です。
ストレスの原因を知ることが大切
ストレスによる体調不良を感じたら、まずはストレスの原因を特定することです。そして、原因を解決するための対処を行いましょう。
職場環境が合わないなら異動や転勤を願い出る、回避できない人間関係ならストレス耐性を高める、などの方法が考えられます。加えて、意識的にストレス解消のための行動をすると良いでしょう。
ストレスを一人で抱え込まない
ストレスを抱えやすい人には「自分一人の力で対処しようとする」という特徴があります。そもそも、自分一人で解決できるのであれば、ストレスにはなりません。問題や支障をきたしたら、適切な相手に相談することが特に重要です。
一人で頑張ろうとする人の多くは、「頼る=甘え」と考えがちです。しかし自分一人で対処できない問題について助けを求めることは、決して「甘え」ではありません。問題を複雑化しないための適切な対処法と言えます。
不調が長引く場合は
また、身体、精神の不調が2週間、3週間と続くようなら、早めに精神科・心療内科の受診、カウンセラーに相談するなど積極的に対処するようにしましょう。
対処が遅れれば遅れる程、精神疾患を発症するリスクが高まってしまいます。
精神科・心療内科・カウンセリングについては、以下の記事をご覧ください。
さいごに
ストレスを感じた時、実際にストレスを受けているのは「脳」です。脳がストレスを感じることで、心身に影響を及ぼし、内臓疾患や精神疾患につながります。
一般的なストレスなら、十分な休息、良質な睡眠、バランスのとれた食事を心掛けることで十分に対処できるでしょう。
過剰な心配はストレスの元になりますから、正しい生活習慣とストレス原因への適切な対処に取り組みましょう。