市販の睡眠改善薬 – その効果と副作用は?

近頃、寝つきが悪い。夜中に何度も目が覚めて、全然寝た気がしない。そんな日が続くと、不眠症かなと心配になります。
かと言って、病院に行くほどでもない。できれば病院に行かずになんとかしたい、という方も多いでしょう。

睡眠改善薬は、そういう方のために作られた薬です。でも、たくさん種類があってどれを選べば良いのか分からない.. とお悩みの方もいらっしゃるでしょう。
そこで、現在市販されている11種類の睡眠改善薬について、その効果や副作用を徹底検証してみます。

市販の睡眠改善薬の効果は

現在市販されている睡眠改善薬は、実はすべて同じ有効成分が用いられています。

風邪薬を飲むと、なんとなく眠くなったという経験をしたことはありませんか?その眠気は、ジフェンヒドラミンという成分が引き起こしています。
実は、どの睡眠改善薬も、1回分の中に50mgのジフェンヒドラミンンが含まれています。
それは、現在市販されている睡眠改善薬がすべて、ジフェンヒドラミンが持つ、神経伝達物質ヒスタミンをブロックする作用を利用しているからです。

ヒスタミンが、脳内でヒスタミン受容体と呼ばれる部分に結合すると、脳が覚醒します。そうすると、脳が興奮状態になり、睡眠がとりにくくなってしまいます。これをブロックするのが、ジフェンヒドラミンなのです。
ジフェンヒドラミンがヒスタミンをブロックすることで、脳の覚醒が抑制されて、眠気を促すのです。

ジフェンヒドラミンの作用

ジフェンヒドラミン

同じ作用機序(作用メカニズム)で、有効成分のジフェンヒドラミンの量も同じですから、現在市販されている睡眠導入剤の効果には、違いがないと言わざるを得ません。
しかし、薬の形状(剤型)や、価格などは、異なっていますから、それらを一覧にまとめました。購入の際の参考になさってください。

市販の睡眠改善薬を徹底比較

製品名 販売メーカー名 形状(剤型) 用法・用量 規格/
メーカー希望小売価格

(消費税8%込)
アンミナイト ゼリア新薬 液剤・
シロップ剤
成人(15才以上)
1日1瓶30mL
就寝前に服用
1本(1日分)
362円(税込390円)
3本入り(3日分)
1,086円(税込1,172円)
グ・スリーP 第一三共
ヘルスケア
錠剤
(フィルムコーティング錠)
成人(15才以上)
1日1回1錠
就寝前に服用
6錠入り(6日分)
1,900円(税込2,052円)
ドリエル エスエス製薬 錠剤
(フィルムコーティング錠)
成人(15才以上)
1日1回2錠
就寝前に服用
6錠入り(3日分)
1,000円(税込1,080円)
12錠入り(6日分)
1,900円(税込2,052円)
ドリエルEX エスエス製薬 軟カプセル剤
(ソフトカプセル剤)
成人(15才以上)
1日1回1カプセル
就寝前に服用
6カプセル(6日分)
2,200円(税込2,376円)
ドリーミオ 資生堂薬品 錠剤 成人(15才以上)
1日1回2錠
就寝前に服用
6錠(3日分)
880円(税込950円)
12錠(6日分)
1,680円(税込1,814円)
ナイフル 日邦薬品工業 錠剤 成人(15才以上)
1日1回2錠
就寝前に服用
10錠(5日分)
934円(税込1,008円)
ネオディ 大正製薬 錠剤 成人(15才以上)
1日1回2錠
就寝前に服用
6錠入り(3日分)
839円(税込906円)
12錠入り(6日分)
1,600円(税込1,728円)
ハルナー
(おやすみーな)
浅田飴 軟カプセル剤
(ソフトカプセル剤)
成人(15才以上)
1日1回2カプセル
就寝前に服用
10カプセル入り(5日分)
1,500円(税込1,620円)
プロリズム カイゲンファーマ カプセル剤 成人(15才以上)
1日1回1カプセル
就寝前に服用
6カプセル(6日分)
1,480円(税込1,598円)
ヨネール 米田薬品 錠剤
(フィルムコーティング錠)
成人(15才以上)
1日1回2錠
就寝前に服用
12錠(6日分)
1,500円(税込1,620円)
リポスミン 皇漢堂製薬 錠剤
(フィルムコーティング錠)
成人(15才以上)
1日1回2錠
就寝前に服用
12錠(6日分)
1,900円(税込2,052円)

(製品名のアイウエオ順、2016年8月時点)

上表から、どの製品も、1箱に3~6日分しか入っていないことにお気づきでしょう。
これは、睡眠改善薬が、一時的な寝つきの悪さや、一時的な眠りの浅さなどの症状に対して使うものだからです。

では、一体、どのくらい効果があるのでしょう。次項で、実際に使用した方の感想を見てみましょう。

睡眠改善薬を使った感想は

睡眠薬のインターネット通販

インターネットで調べると、ツイッターや個人のブログなどで、睡眠改善薬を試してみた方の感想を見ることができます。また、睡眠改善薬はインターネットでも購入できるので、通販サイトなどにも感想が掲載されています。

そんな、実際に使ってみた方の感想を、一部抜粋してご紹介しましょう。

使ってみて良かった!

  • 睡眠改善薬を飲んで寝たらぐっすり眠れました。
  • 飲んで1時間くらいするとウトウトしてきます。
  • 即効性はないですが、眠った後に朝までぐっすり眠れます。
  • 私にはコレが合うみたいですぐ眠れます。
全然良くなかった!

  • 効果のある時と、効果のない時があります。
  • 睡眠改善薬を飲んで寝ると必ず悪夢を見ます。
  • まったく眠れない上に、だるいです。
  • 飲んだ次の日、薬が抜け切れなかったようで頭の重さふらふら感に襲われました。

このように、睡眠改善薬を使ってみて良かったという方がいるかと思えば、全然良くなかったという方もいらっしゃいます。
薬ですから、合う合わないがあって、良かったという方でも、効き目は人によってバラバラですし、良くなかったという方には副作用が出てしまった方もいるようですね。

また、睡眠改善薬は、一時的な不眠の症状に対して使うものですから、症状によっては治らない場合もあります。
どの睡眠改善薬の添付文書(箱の中に入っている薬の説明書)にも書かれていることですが、2~3回服用しても症状が良くならない場合には、服用を中止して、病院を受診しましょう。

睡眠改善薬の効果はどれも同じ

効果の現れ方や感じ方は、人によって異なります。そこで、客観的なデータで効果を見てみましょう。

以下は、ドリエルの臨床試験の結果です。
軽度~中等度の睡眠障害がある患者さん173名に、寝る30分前に、ドリエルを2錠飲んでもらったところ、効果を実感できた方は全体の79.2%でした(円グラフ上)。
また、お医者さんから見て効果があったなと感じた割合は82.1%でした(円グラフ下)。

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出典:エスエス製薬㈱「ドリエルの睡眠改善効果」

睡眠改善薬の臨床試験の結果はほとんど公開されていませんが、現在市販されているどの睡眠改善薬も、同じ有効成分が同じ分量だけ含まれているのですから、あまり大差はないでしょう。

同様に、どの睡眠改善薬も、その副作用にもあまり違いはありません。次の項では、睡眠改善薬の副作用について詳しく見ていきましょう。

市販の睡眠改善薬の副作用は

睡眠薬の種類

睡眠改善薬は、OTC医薬品と言って、ドラッグストアや薬局などで購入することができる薬です。現在市販されている睡眠改善薬は、OTC医薬品の中でも、副作用などの安全性の面で、より注意が必要な薬として、指定第2類医薬品に分類されています。

これに対し、病院の医師の処方せんが必要な薬を処方せん医薬品と言って、睡眠薬や睡眠導入剤がそれに当たります。これらは、副作用の可能性が高く、使用に特別の注意が必要な薬であるため、医師の処方せんが必要なのです。

では、具体的には、睡眠改善薬にはどのような副作用の可能性があるのでしょう。

睡眠改善薬で生じるかもしれない副作用

以下は、睡眠改善薬の添付文書に記載されている副作用です。どの睡眠改善薬にも、同じことが書かれています。

関係部位 症状
皮膚 発疹・発赤、かゆみ
消化器 胃痛、吐き気・嘔吐、食欲不振
精神神経系 めまい、頭痛、起床時の頭重感、昼間の眠気、気分不快、神経過敏、一時的な意識障害(注意力の低下、ねぼけ様症状、判断力の低下、言動の異常等)
泌尿器 排尿困難
循環器 動悸
その他 倦怠感

また、この他にも、口の渇きや下痢などの症状が現れることがあり、その症状が続いたり、増強することがあるかもしれません。このような症状は副作用ですから、すぐに服用を中止して、病院を受診しましょう。

その他に、翌日まで薬の作用が残ってしまい、日中も眠気を感じたり、身体が重いような、だるいような症状が現れることがあります。これを持ち越し効果と言い、この持ち越し効果があるようなら、薬が合っていないのかもしれませんから、服用を止めた方が良いでしょう。

どのくらいの頻度でどんな副作用が出る?

ここで気になるのは、どのくらいの頻度で、どんな副作用が生じるのかということでしょう。

先ほどもご紹介したドリエルの臨床試験の結果を見てみると、少数の方に副作用が出てしまったようです。

副作用の有無 人数(割合)
副作用が現れなかった 173名中165名(94.5%)
副作用が現れた 173名中8名(4.6%)

そして、副作用が現れたという方には、以下のような副作用が生じました。

ドリエルの服用で現れた副作用

  • 眠気(2名)
  • 多夢(2名)
  • 悪心(1名)
  • 頭痛(1名)
  • 心高部痛(1名)
  • 夢・気分不快(1名)
  • 起床時の頭重感(1名)

出典:エスエス製薬㈱「ドリエルの副作用発現率」

副作用の頻度はそれほど多くはありませんが、持ち越し効果と考えられる症状が多いのが特徴でしょう。
そのため、もし副作用が出てしまったら、朝起きた後も眠気が取れなかったり、夜中に夢をたくさん見たり、目覚めはとても悪いものになりそうです。

睡眠改善薬に依存性はある?

脳に悪影響

次に、もしかすると副作用よりも気になるかもしれない、依存性について考えてみます。

昭和大学薬学部で行われた調査では、市販の睡眠改善薬を購入しない理由の第1位は「くせになると怖いから」で、51.7%を占めていました。また他の調査でも、74.8%が「依存症になりそう」と考えていました。

参考:昭和大学薬学雑誌 第1巻第2号(2010年)
「睡眠改善薬に関する消費者の現状および販売時における薬剤師のかかわり」

現在主流の睡眠薬や睡眠導入剤は、脳の中枢神経に作用して、鎮静催眠作用や抗不安作用を示すというものです。これらの多くは、中枢神経に直接作用して精神機能に影響を与えるもののうち、依存性があるものとして、向精神薬に指定されています。また、習慣性があるとして、習慣性医薬品にも指定されています。
実際、処方せん医薬品である睡眠薬や睡眠導入剤は、その依存性が問題になり、医師が1回の処方で3種類以上の睡眠薬・睡眠導入剤を処方することはできなくなりました。

では、市販の睡眠改善薬にも依存性の可能性はあるのでしょうか。
はじめの方でご説明したように、睡眠改善薬の作用機序(作用メカニズム)は、有効成分であるジフェンヒドラミンがヒスタミンをブロックすることで、脳の覚醒を抑制して眠気を促すというものです。

睡眠薬・睡眠導入剤とは、作用機序(作用メカニズム)が違っています。そのため、医薬品としての分類も異なっているのです。具体的には、睡眠改善薬はOTC医薬品(指定第2類医薬品)に指定されていて、向精神薬や習慣性医薬品には指定されていません。
つまり、市販の睡眠改善薬は、注意が必要なものの、用法・用量を守って使用していれば比較的安全な薬だと言うことができます。ですから、依存性については、ほとんど気にしなくても良いでしょう。

しかし、依存と言うのは、薬物やアルコールに限ったものではありません。ギャンブルや買い物、最近ではスマートフォンや人(恋人や友人など)への依存も問題になることがあります。薬そのものへの依存でなくとも、薬がないと眠れないと思いこむことによって精神的に依存してしまうということもあるのです。
ですから、睡眠改善薬を使用する際は、くれぐれも用法・用量を守って、2~3日服用しても効果が見られないようなら、服用を中止して、お医者さんに相談しましょう。

睡眠改善薬に耐性はある?

副作用とは違いますが、もう一つ気になるであろう、耐性についても考えてみましょう。
薬の耐性とは、普通なら効果があるはずの薬が効かなくなることを言います。つまり、薬に身体が慣れてしまって、効き目が悪くなったり、効かなくなるのです。

ここで、アメリカ・ミシガン州のヘンリー・フォード病院の睡眠障害臨床研究センターで行われた研究をご紹介します。睡眠改善薬の主成分であるジフェンヒドラミンが引き起こす、眠気についての研究です。

18~50歳の15名の健康な男性に、ジフェンヒドラミン50mgを、1日2回、4日間服用してもらいました。また同じ15名に、別の4日間にプラセボ(ジフェンヒドラミンと見た目は同じで、成分が0mgのもの)を服用してもらいました。

その結果は、以下のとおりでした。

服用日数 結果
1日目 プラセボに比べて、ジフェンヒドラミンが強い眠気を示した。
4日目 プラセボとジフェンヒドラミンの眠気の強さは同じ程度だった。

この研究から、ジフェンヒドラミンは3日目までは強い眠気を生じますが、4日目以降はあまり眠気を生じないことが分かりました。

(筆者意訳)

出典:J Clin Psychopharmacol. 22(5)(2002年)「Tolerance to daytime sedative effects of H1 antihistamines.」

以上から、睡眠改善薬は、4日以上の使用では耐性を示すことが分かります。つまり、4日以上使用しても、あまり効果は見込めないということです。
この結果から、睡眠改善薬が2~3日の使用に限られている理由が明らかになったと言えるでしょう。

清酒酵母の深い眠り

以上、睡眠改善薬の効果と副作用について、色々な角度から見てきました。

睡眠改善薬は、ドラッグストアや薬局など、身近な店舗で購入でき、手軽に利用できるというメリットがあります。しかしその一方で、軽い気持ちで利用し続けることによって、不眠の症状が悪化するというデメリットもあります。

不眠の症状を悪化させないためにも、睡眠改善薬の用法・用量、注意事項をしっかり守って、適正に使用しましょう。そして、長引く不眠には、睡眠改善薬に頼り続けず、医師の診断を受けましょう。

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