睡眠に音楽、本当に効果はある?「眠れる音楽」の選び方

最近では、眠れない悩みを抱えている人の多くが、睡眠薬や睡眠導入剤を処方してもらっています。
睡眠薬というと、ひと昔前は「危ない薬」というイメージが強く、抵抗感を持つ方が多かったはずです。しかし、ここ十数年で新しく発売された睡眠薬は、それまでの睡眠薬にあった死に至る副作用など、致命的な問題が大幅に改善され、「手軽に使用できる薬」として浸透しつつあります。

それでも、依存性という問題や、一定の副作用の問題は無くなったわけではありません。
日本では、睡眠導入剤の乱用が今でも問題になっており、最も乱用される処方薬のベスト5には、一般的に安全だと言われている睡眠導入剤がランク・インしています。

睡眠薬

音楽は睡眠薬になり得る?

そんな現代では、書店に行けば「寝つきを良くするための方法」が書かれた書籍がずらりと並んでいます。手軽に睡眠の質をよくする方法が書かれた書籍は、人気が衰える事がないようです。
中でも、「寝つきを良くする音楽」が付録として付いている本は、特に売れ行きが良いようです。
私も、以前試しに1冊購入したころがあります。著名なアーティストが演奏に参加しるという触れ込みのものでした。

音楽自体は、いわゆるヒーリングといった種類の物で、室内音楽のような、耳触りの良いものでした。たしか、「3曲目くらいまで通して聞けば、必ず眠れる」というような事が書いていました。

CDを購入した当初、最初の頃は、確かに気が付いた頃には眠気が訪れ「馬鹿にできないな..」と思っていたのですが、不眠が酷い頃に改めて試してみると、全く効果はありませんでした。

多くの方が疑問に感じていることなのでしょうが、実際に、音楽には睡眠の質を改善させる効果はあるのでしょうか?

なぜ、音楽で眠くなるのか

調べてみると、ここに興味深い実験結果があります。

ケイス・ウェスタン・リザーブ大学(オハイオ州クリーブランド)が、 台湾人の高齢者30人を対象に実験を行ったところ、 睡眠前の45分間に穏やかな音楽を聴くと、半数が長く深い睡眠を得られたという研究成果を発表しています。

その中の画期的な発見として、3週間の実験の結果、音楽を毎晩繰り返し聴くことで、その音楽を聴くと眠れるという習慣ができることが判明しています。

自分の好きな睡眠導入音楽を見つければ、それを毎晩繰り返し聞くことによって、自然に眠れる習慣が付くというものです。

出典:「不眠に音楽療法 – 光療法の総合サイト」

これを読んだ限り、寝る前に音楽を聴くことで半数近くが眠りが深くなった。また、習慣化することによって、ひとつの入眠儀式として、条件反射的に眠気を促すことができるということが分かります。

音楽の持つヒーリング効果

実は、音楽で眠くなる効果については、既にある程度の理由は解明されています。それは、簡潔に言えば、音楽のリラックス効果によって、心身をリラックスした状態にすることで、睡眠に最適な状態へと脳の状態を切り替えることができるということです。

よく、睡眠を促す音楽CDに「α波(アルファ)を出す音楽」などと書かれていますが、これは、音楽を聴くことによって脳をリラックスした状態にするという意味でしょう。
勘違いされやすいのですが、音楽に脳の周波数が同調して、脳波が作られる訳ではありません。あくまで、音楽のリラックス効果によって、α波が作られるという意味なのです。

安静(リラックス)時にアルファ波が多く出現することから、近年、「アルファ波(が出る)音楽」などと、アルファ波という言葉を商品の宣伝に用いることが増えているが、その場合は単に「リラックスできる音楽」と言っているのと同じである。
耳から入った音楽に同調して脳波にアルファ波が出現する、というような宣伝文句は科学的根拠を欠く。

出典:「アルファ波 – Wikipedia」

このように書くと、なんだか「期待しているようなものとは違う」と考える方がいるようですが、リラックス効果による睡眠効果は、睡眠にとって大きなメリットとなり得ます。

そもそも、リラックスしていない状態では、良い睡眠をとることは不可能なのです。神経と身体が緊張している状態では、自律神経が覚醒された状態のままとなっているのです。
この状態では、身体のほとんど全ての器官が、眠りとは逆の状態にあります。
呼吸、体温、胃腸の働き、心臓の動きなど、ほとんど全てにおいて言えることです。これでは、満足に眠れるわけがありません。

考え事や不安、緊張感などによって、なかなか眠気が訪れないという方には、リラックスできる音楽はお勧めの方法と言えるでしょう。

どんな音楽を聴けば良いの?

睡眠の音楽

初めの話に戻りますが、「では、一体どんな音楽を聴くのが良いのだろうか?」実際に試してみようと考えている方は、きっと気になるところでしょう。
しかし、これまでに書いた事をしっかり読み返してみてください。。
音楽に期待される効果は、あくまで以下の3つです。

  1. あなたにとって、リラックスできる音楽であること。
  2. 毎日繰り返して聴ける音楽であること。
  3. できれば1時間以上収録されているCDであること。

「どの音楽を聴けば眠れるのか」という事にこだわる人が多いようですが、答えは単純です。あなたにとって、リラックスできる音楽なら、あまり深く考える必要はありません。

調べていると、「声が入っている音楽はダメ」や、「激しい音楽はダメ」などと紹介している人もいるようですが、そんな事は決してありません。
私の知り合いには、「深夜ラジオを聴いていると、一番リラックスできて眠れる」という人もいれば、「ある落語のCDが、一番よく眠れる」という人もいます。「船の音が最高に眠くなる」というちょっと変わった人もいます。

人によっては、激しいロックなどの音楽が一番リラックスできるという人もいます。このような人の場合、睡眠に良いとされるヒーリング音楽が「なんだか、わざとらしくて気持ち悪い..」と感じる場合もあります。

私の場合は、音楽よりも環境音の方がお気に入りです。特に、川のせせらぎや、繰り返す波の音がとても良く眠れます。

それから、最近のお気に入りは、「ドビュッシー」の音楽です。クラシック音楽の中でも、最も睡眠に適しているのではないかと(個人的には)感じています。

上記は、あくまで私にとってリラックスできる音楽ですので、あなたにとって「心地良い」と感じなかった場合は、あなたに合う物を根気よく探してみてください。

残念ながら、聴くだけでα波デルタ波が爆発的に発生する音楽は存在しません。魔法の睡眠音楽があるとするなら、習慣化することによって入眠儀式化され、自然的に発生する睡眠効果でしょう。

私も、魔法の睡眠音楽があるとしたら、ぜひ欲しいのですが。
それこそ、そんな音楽があったとしたら、睡眠薬が売れなくなってしまいそうです。

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