夜眠くならない、本当の原因とは – 夜だから眠れない?

昼間や朝は眠くなるにも関わらず、夜になると眠ることができなくなるという方がいます。こういった症状に悩む方は、精神性理性不眠症の可能性があります。

夜になると眠れない

精神性理性不眠症とは?

精神性理性不眠症とは、眠れないこと自体を恐れ、余計に眠れなくなってしまう不眠症の症状のひとつです。
不眠症は、睡眠の量が足りなかったり、睡眠の質が悪い状態です。これらの原因には、精神的なストレスや環境の変化、不規則な生活、なんらかの病気を患っているなど、さまざまな要因が考えられます。

例えこのような原因がなくなり、不眠症が改善されたとしても、以前眠れなかったことがきっかけとなり、眠れないこと自体を恐れるようになることがあります。

「もしも眠れなかったらどうしよう」

「朝、ちゃんと起きられるだろうか」

そうした考えがあらわれ、眠ろう眠ろうと強く意識すればするほど、緊張感が生じてしまったり、なんらかの不安を感じて、余計に眠れないといった悪循環になります。
眠りに対する不安感や緊張感、眠りを妨げるような悩みのせいで、眠ることが全くできなくなることが、精神性理性不眠症なのです。

精神性理性不眠症の対策

それでは、精神性理性不眠症を改善するにはどうすればよいのでしょうか。

これには、たとえ眠れなくても苛立ったり不安になったりすることがないようにしなければなりません。この際に効果的だと考えられているのが、認知療法です。

認知行動療法によるアプローチの仕方

  • 刺激統制法
    寝床で眠れない時間を過ごさないようにするため(就寝環境=覚醒する場所と学習しないように)「寝室を睡眠以外に使用しないように」教示します。
  • 睡眠制限法
    睡眠効率が上がるように、「あえて就寝時間を遅らせて、布団に入ったらすぐ眠るように」(就寝環境=眠る場所と再学習するように)教示します。
  • 睡眠衛生教育
    夜間の覚醒水準を低下させるような生活の習慣(カフェインやニコチン摂取、入浴の時間やタイミング、眠りに適しているとされる就寝環境づくりなど)を教示します。
  • リラクセーション
    覚醒と拮抗する(同時に生じない)リラックスした状態を作るように、各種リラクセーション法(漸進的筋弛緩法や呼吸法など)を日中練習し、寝床でも行うように教示します。
  • 逆説的志向
    眠ろうと努力するとかえって、覚醒水準が上がり眠れなくなってしまうので、敢えて「眠らないように」努力をしてみようという方法(眠らないようにすることで、覚醒水準を上げる眠るための努力をしなくなる)です。
  • 認知的再体制化
    まずは、「眠らないと・・・なことになってしまう」「睡眠はとても重要で…」という睡眠に対する考え方を援助者と一緒に検証をし、睡眠に対するあまり機能的でない(得をしてないない)考え方に気づくという方法です。
  • 行動実験
    主観的な睡眠の状態は、起床後に振り返って評価をされます。不眠症の方の中には自分の睡眠を過小評価していて過度に自分の睡眠が悪かったと思っている人が多いため、睡眠検査と自己評価を比べて評価の仕方を顧みます。
  • 認知的統制法
    不眠の人は、寝床が自分の睡眠や心配ごとなどを考える場になっている人が少なくありません。認知的統制法は刺激統制法と似たもので、「就寝環境=考える場(覚醒する場)」という学習を解除するために、考え事などは就寝時間以外に整理をして、寝室は眠る場所にするよう教示します(夜寝床で考えてもあまり建設的ではない)。
  • 思考妨害法
    ネガティブな考え事を抑えるのに、「考えないようにしよう」というのはかえって逆効果であることが知られています。考え事をやめるのではなく、無意味なことで頭をいっぱいにすることで、相対的にネガティブな考えが出てこないようにして覚醒水準を下げる方法です。(海外などではTheを繰り返し想起する方法などがあります。)
  • マインドフルネス認知療法
    マインドフルネスとは「いま・ここでの自身の状態や認知を無評価的な立場から気づきを向け、あるがままに知覚する」という態度(こころの持ち方)のことを言いますが、考え事を変容させたり、増減させたりするのでなく、考え事に振り回されないような態度を身につけようという方法で、様々なやりかたがあります。

出展:不眠症の認知行動療法 上越教育大学

欧米では古くから、睡眠や不眠に対しての考え方、睡眠に対する自己評価の歪みに対する、非薬物療法が注目されてきました。これは 睡眠習慣を見直し、不眠に対する恐怖を取り除いていくという療法で、さまざまな種類の治療法があります。

たとえば、漸進的筋弛緩療法では、全身の筋肉や特定の筋肉を順序だてて弛緩させ、リラックス状態のまま眠りへ誘うという方法です。起きているときの緊張状態と弛緩している状態の違いを意識させます。

また、刺激制御療法では、眠りを妨げる条件反射を引き起こす刺激を取り去ることを目的とし、就寝時刻が近づくとかえって目が覚めて眠れなくなることを防ぎます。
これはユニークな方法で、「20分以内に寝付けなければ、ベッドから出てほかのことをする」「眠気を感じたら、またベッドに戻る。それでも寝付けなければ、また起きる」という方法を取ります。

この療法は、特に入眠障害と中途覚醒に効果があります。

精神性理性不眠症に心当たりのある方は、なるべく薬による治療には頼らずに、認知療法にも詳しい知識を持つ、睡眠の専門医の診察を受け、適切な治療を受けてみてはいかがでしょうか。

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