夜眠れないから朝起きられない:負のサイクルの止め方
「夜眠れないために朝起きるのが辛い」「昼間はウトウトするのに、夜になると眠気が起こらない」
こんな状態が続くと、家族や同僚にイライラしたり、落ち込んだり、やる気が起きなくて何事もはかどらないなど自分を責める要素ばかりが積み重なることになります。
反対にすっきりと目が覚めると、やる気が湧き気持ちにもゆとりができるものです。
そこで、「覚醒と睡眠のリズム」を整えるために、概日リズムを調整しましょう。
概日リズム睡眠障害とは?
概日リズム睡眠障害になると、「夜は眠れないし、朝は起きられない」
これが当たり前のことになります。
眠りは、日中の活動で受けた心身のダメージを修復する働きをしています。しかし、何らかの原因で眠りが不足すると、十分に修復できないために次の活動に支障が起こるのです。
ではなぜ眠れないのでしょうか?
眠れない原因はいくつかありますが、精神的な問題や身体の病気に心当たりがない場合には「概日リズム睡眠障害」が考えられます。
私たちの体には、健康を維持するための様々なプログラムが組み込まれています。「睡眠と覚醒」は「体内時計」と呼ばれるプログラムによって自動的に切り替えが行われます。
私たちの知っている時間(生活時間)は24時間で1周期を刻みますが、体内時計は24時間ちょうどではありません。個人差はありますが、おおむね10分~1時間ほど長くなっています。逆に23時間と短い周期の人もいます。
周期の長い人は夜勤や睡眠不足に強く、周期の短い人は朝から活動的で能力を発揮しやすい傾向にあります。しかし、これは生活リズムに合わせた場合です。
24時間の生活時間と体内時計の差を放置していると、毎日少しずつズレが生じます。このズレが広がると社会生活に支障を来すことになります。
つまり、「概日リズム睡眠障害」とは、生活時間と体内時計のズレが原因で「眠れない」「寝つきが悪い」といった睡眠障害が生じている状態なのです。
- 睡眠相後退症候群
眠る時間帯が慢性的に遅れた状態になり、昼頃にならないと起きられない - 睡眠相前進症候群
早い時刻から眠くなって寝てしまい、日が昇る前に目が覚めてしまう - 非24時間睡眠覚醒症候群
毎日数時間ずつ入眠時間・覚醒時間が遅れていく
体内時計は毎朝光を浴びるとリセットされ、多少であれば自動調整が行われます。
しかし、以下の生活を続けていると修正が困難になり、概日リズム睡眠障害につながります。
- 夜更かししがち
- 就寝直前までパソコン、ゲームなどIT機器の画面を見ている
- 朝食を食べない
- 食事時間が不規則
- 休みの日にはいつもより2~3時間寝坊する
- 午前中、明るい場所で過ごさない
概日リズム睡眠障害の改善法
体内時計は、時間を知らせる環境要因(光や温度)のない場所でもリズムを刻み、体内で時間を測ります。さらに、体内時計は一つではなく様々な臓器、筋肉、細胞に存在し、複雑なネットワークを作っています。これらの体内時計を統合しているのが視交叉上核(親時計)です。
視交叉上核は「光」の影響を強く受けます。目が覚め、太陽の光を感知すると、視交叉上核から体内時計に「活動時間の開始」を知らせる指示が出ます。同時に「睡眠」を促すためのホルモン「メラトニン」の生成が始まり、14~16時間後にメラトニンが放出されると眠気が生じます。
生活習慣の改善
体内時計を調整し、「夜眠れない 朝起きられない」という状態を改善するためには、生活習慣の改善が不可欠です。
【体内時計を調整する生活習慣】
①朝の起床時間を定める
休日は普段より遅くまで寝ている人は少なくありません。疲労を回復したいのは分かりますが、せっかく平日に整っている睡眠リズムが崩れてしまいます。寝坊は1時間までとし、前日または休日の夜に早めに就寝しましょう。
②朝の光をしっかりと目で取り入れる
体内時計は視交叉上核が光を感知することでリセットされ、新たな周期を刻み始めます。カーテンを開け、30分程度は意識して明るい場所を見るようにしましょう。
③朝食をしっかりと噛んで食べる
睡眠中も体はホルモンや神経伝達物質を生成、分泌しています。これらは栄養素を原料としています。このため、消費され減少した栄養素を朝食で補う必要があります。
またしっかりと噛むことで、メラトニンを形成するために必要なセロトニンを増やすことができます。朝は食べたくないという人もいますが、バナナを1本や栄養補助食品など、少しでも「咀しゃく」できるものを食べるようにしましょう。
④食事時間を決める
体内時計は様々な臓器に存在します。それぞれの体内時計を調整することは、覚醒と睡眠のリズムを整えるためにとても大切です。仕事や育児などでなかなか食事の時間を決めることが難しい場合は、朝食だけでも時間を決めて食べるようにすると良いでしょう。
⑤夜は光の刺激を極力避ける
夜の強い光は自然界には存在しません。このため、夜に強い光を受けると視交叉上核がより強く刺激され、体内時計を狂わせる大きな原因になります。仕事で遅くまでパソコンを使用する場合にはサングラスを着用しましょう。
⑥就寝1時間前には照明を落とし、リラックスを心がける
眠るために何よりも必要なのは「緊張の緩和=リラックス」です。
入浴は心身の緊張をほぐし、血流をスムーズにします。眠気は体温が下がることで訪れます。入浴後すぐに布団に入ると逆に寝つきが悪くなります。就寝1時間前くらいに入浴を済ませ、その後は湯冷めしないようにしつつリラックスした時間を過ごすようにしましょう。
薬理治療
残業や夜勤が多い、倉庫など光が十分でない勤務状況にあるなら、生活習慣の改善をしながら薬の力を借りましょう。
特に「概日リズム睡眠障害」に効果があると言われているのが、「ロゼレム(メラトニン受容体作動薬)」です。
メラトニンは睡眠を促す脳内ホルモンで、「睡眠ホルモン」とも呼ばれます。ロゼレムはメラトニンと同様の働きをすることで睡眠リズムを作ります。
睡眠に関することは、精神科や心療内科が専門ですが、内科でも睡眠薬の処方はしてもらえます。
ロゼレムについては以下の記事をご覧ください。
すっきり起きられない朝には・・・・
夜眠れないために朝起きられないのは辛いことです。しかし、朝決まった時間に起きることが体内時計の調整、そして睡眠にとってとても大切です。
とは言え、十分に眠っていないと起き上がるのも一苦労。そこで、気持ちよく起き上がるためにできることをご紹介します。
アロマで目覚めを刺激する
アロマは夜のリラックスタイムに最適ですが、朝、起き辛い時にも適しています。リフレッシュ効果のあるアロマを枕元に用意しておきましょう。
ティーツリー、ペパーミント、ユーカリ、レモン、ローズマリー
【方法】
精油を手のひらに1滴落とし、両手ですり合わせ、鼻と口を覆って香りを嗅ぐ。
または精油をティッシュに1~2滴落としその香りを嗅ぐ。
体を段階的に目覚めさせる
一息に起き上がろうとするとますます気が重くなります。簡単な動作から始めて、徐々に活動開始を体に認識させましょう。
- 四つん這いの姿勢をとり、前後に体を動かす
- 顔を前向きに持ち上げられるようになったら正座に移り、手を前に伸ばし、手のひらを振る
- 次に片方の指を反対の手でしっかりと握り、鼻からお腹にいれるように息を吸い込みながら天井に向かって持ち上げる(肩から持ち上げる感じでしっかりと伸びをする)
- 口から空気を一気に吐き出し、一気に腕を落とす
長さの違う別々の時計を合わせるには、「規則正しい生活習慣」を身につけること大切だと認識しましょう。