熟眠障害とは-寝足りないと感じる原因と対処方法
十分な睡眠時間を確保していても、寝足りないと感じることは誰にでもあります。特に心配事がある時、疲労が蓄積している時は、熟睡感を得にくいものです。逆に寝すぎた時にも、いつまでも眠気を感じます。このような場合は、問題が解決すれば、数日から長くても2週間で睡眠の問題も解決します。
しかし、毎日十分な時間睡眠をとっているのに、毎日寝足りないと感じる状態が1か月以上続くなら、熟眠障害に陥っているかもしれません。
熟眠障害ってなに?原因は?
熟眠障害は、睡眠障害の一種で、睡眠時間が十分なのに熟睡感が得られない症状です。直接的な原因は、睡眠の中断や眠りの深度が浅いことです。
ではなぜそのような状態になるかというと、いくつかの原因があります。
- 環境要因:時差がある場所、枕が変わる、眠っている間に暑さ、騒音、明るさなどの影響を受けるなど
- 精神的要因:悩み、イライラ、極度の緊張、睡眠に対する思い込みなど
- 生活習慣要因:不規則な生活、運動不足、飲酒・喫煙・カフェインの摂取、薬の副作用など
- 身体要因:年齢、頻尿、痛み、かゆみなど
睡眠には、眠りの浅いレム睡眠と、眠りの深いノンレム睡眠(熟睡状態)の二つの状態があります。しかし、上記のような原因によってノンレム睡眠が阻害されると、熟睡感を得られなくなります。
どうしたらいいの?改善策は?
多くの人が、十分な眠りが取れていないと感じると、眠るための快眠法、睡眠に良いサプリなどを試します。しかし、根本的な問題を解決しなければ、健康的な睡眠を取り戻すことはできません。
1.内科、精神科、心療内科を受診する
睡眠時間はしっかりと確保しているのに、寝足りない感じが1か月以上続くなら、心や体に原因がないかを調べましょう。
眠りが足りないと感じる背景に、睡眠時無呼吸症候群、糖尿病、うつ病などの病気が隠れている場合があります。内科の健康診断で主要な検査を受ければ、病気が隠れていればすぐに治療に取り組むことができます。
疲労感、頭痛、胃痛など、睡眠以外に何も問題がなければ、精神科、心療内科で相談しましょう。熟眠障害の原因が、性格的なものやストレス、精神的病気によるものなら、以下のような治療が行われます。
- 精神安定剤、睡眠薬などの薬理療法
- 睡眠制御法、光療法による治療
- カウンセリングや生活習慣、食生活の指導
熟眠障害に睡眠薬は効果がないと言う意見もあります。確かに、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬は、脳の働きを抑制し強制的に眠らせるため、睡眠深度は浅くなると言われています。
しかし、睡眠深度を自然に保つ睡眠薬もあります。メラトニン受容体作動薬ロゼレムは、概日リズムの改善に寄与する睡眠薬です。睡眠ホルモンメラトニンと同様の働きをし、概日リズムの再調整をします。ただし、即効性はありません。服用後からある程度の効果はありますが、1か月くらいかけて徐々に眠りが改善される薬です。
2.生活習慣の見直し・改善
熟眠障害などの睡眠障害は、生活習慣の乱れと過度のストレスが原因となっている場合が少なくありません。2週間以上、睡眠に問題を感じるなら、生活習慣やストレス対処が適切かを見直してみましょう。
生活習慣のどこに問題があるか分からない人は、下の項目をチェックしてみてください。おそらく、すべてクリアできている人は少ないと思います。できていない部分を改善することで、生活リズムの改善、自律神経のバランス調整につながります。
- 毎朝決まった時間に起床している
- 起床したら朝日を浴びている(光を見ている)
- 決まった時間にしっかりと噛んで朝食を食べている
- 適度な運動を習慣にしている
- 栄養バランスの取れた食事を心がけている
ストレスは、脳、自律神経など体のバランスを調整する機能に悪影響を与えます。
多様なストレスに対処するためには、複数の対処法を組み合わせて実践することが効果的です。できるだけたくさんの対処法を持つようにしましょう。
下記のような対処法が、特に効果的です。
- 信頼できる人に話す
- 相談する
- 趣味に没頭する
- 悩みや心配事などを就寝前に書き出す
また、就寝前にその日受けたストレスを軽減することは、睡眠の改善だけでなく、ストレスの蓄積の回避につながります。
ストレスの対処法については、以下の記事で詳しく紹介しています。
3.睡眠習慣の見直し・改善
日中に睡眠改善の努力をしていても、就寝前に睡眠の質を下げる行動をしていると、せっかくの努力が無駄になります。睡眠の質を改善し、しっかり眠るためには睡眠前にリラックスすることが大切です。
- 多量の飲酒または日常的な就寝前の飲酒
アルコールには眠気を引き起こす作用があります。寝つきは早くなりますが、眠りの質は低下します。 - 就寝前の食事、刺激物の摂取
食事が消化されないうちに就寝すると、睡眠中にも内臓は活動を続けることになります。これでは深い眠りにつくことはできません。 - 就寝前のコーヒー、お茶、ドリンク剤などのカフェイン摂取
カフェインに覚せい作用があることは広く知られています。せっかく眠気が近づいていても遠ざかってしまいます。 - 入眠直前までのIT機器操作
IT機器を布団の中に持ち込んで、眠くなるまで使っている人は少なくありません。しかし、光は神経を刺激し、脳に活動時間であると錯覚させてしまいます。就寝の1時間前にはIT機器の操作を終了しましょう。
寝足りないと感じるのは、疲労・ストレスの蓄積、睡眠の質の低下に問題があると考えられます。 睡眠薬や睡眠に良いサプリは一時的な補助と考え、原因の見直しや改善に取り組みましょう。