時差ぼけと対処法 – 時差症候群(ジェットラグ症候群 )の治し方
海外旅行などで、短時間の間に3時間以上の時差がある距離を行き来すると、いわゆる「時差ぼけ」という症状に悩まされることがあります。
この時差ぼけの事を、専門用語では「時差症候群」(または「ジェットラグ症候群」)と呼んでいます。
時差症候群は、車や船などで時間をかけて長距離を移動する場合にはほとんど起こることがありません。
時差のある長い距離を航空機などで短時間に移動すると、体内時計にズレが生じます。時差症候群は、概日リズム(生体リズム=体内時計)が乱れることによって起こる睡眠障害の一つです。
概日リズム
人間は体内時計によって、1日24時間を1つの周期として刻んでいます。この24時間のリズム(概日リズム)は、睡眠のリズムもコントロールしています。
概日リズムについては、以下の記事でも詳しく説明しています。
私たちが、夜になると眠くなり、日中はしっかりと脳を覚醒させて過ごせるのは、概日リズムが正常に刻まれているおかげです。
しかし、短時間の間に3時間以上も時差のある距離を移動すると、出発地の基準で動いている体内時計と、到着地の太陽の動きに合わせた時間(現地時刻)が大きく異なっているため、体内時計に大きな変化が起こり、時差症候群として体調の異変に現れるのです。
時差症候群の症状とは
時差症候群には、具体的にどのような体調の変化が現れるのでしょう。
以下の表は、一般財団法人 航空医学研究センターがウェブサイトで公表しているデータです。257名の航空乗務員を対象とした、時差症候群の調査結果がまとめられています。
これを見ると、時差症候群が起きた際にどのような症状がよく現れるのかが分かります。
調査対象となった航空乗務員のうち、時差症候群の症状の経験があると答えた方は、257名中227名でした。実に、乗務員の88%にも登ります。
常に世界中を飛び回っているような職業の方たちでさえ、ほとんどの人が時差症候群を経験しているということになります。
時差症候群の症状
時差症状 人数 割合 睡眠障害 173人 67.3% 眠気 43人 16.7% 精神作業能力低下 37人 14.4% 疲労感 27人 10.5% 食欲低下 26人 10.5% ぼんやりする 24人 9.3% 頭重感 15人 5.8% 胃腸障害 11人 4.3% 眼の疲れ 6人 2.3% その他(吐き気・イライラ) 8人 3.3%
上記を見ても分かるように、睡眠障害と眠気が80%以上を占めています。
時差症候群では、これら睡眠の症状とは別に、集中力の低下やぼんやりしてしまう症状、疲労感や食欲低下などの身体的な症状も多く現れることも分かります。
時差症候群の対処法
しかし、時差症候群はあくまでも一時的な症状です。
現地に滞在し、現地の時刻に合わせて生活を続けていれば、現地の時間に体内時計が同調していき、何もしなくても徐々に症状が解消していくのが普通です。
ただし、自然に改善される症状とはいえ、ちょっとした努力をすることで、早めに症状の改善を促す(現地の時間に体内時計を合わせる)ことができます。
- 出発前から到着地の時刻に近い生活をするようにする。
- 飛行機が出発したら、腕時計の時刻を到着地に合わせておく。
- 現地の時刻に合わせて起床し、朝日を浴びるようにする。
- 現地の時間に合わせて食事をとるようにする。
- 現地ではなるべく外出をし、現地の人と交流を持つようにする。
- メラトニンの服用、超短時間型睡眠薬の服用など、薬やサプリメントを活用する。(後述)
- 移動中の飛行機では、アルコールやコーヒーの摂取を控える。
太陽の光は、体内時計を同調させるための非常に重要な同調因子です。
ですから、朝の起床とともに太陽の光を浴びるようにすれば、現地の時刻に体内時計を同調させる働きを早めることができます。
同調因子については、以下の記事でも詳しく説明しています。
時差症候群の治療に限らず、普段の生活でも同様のことが言えます。
部屋にこもり、現地の時刻とズレた時間に睡眠や食事をとったりしているのでは、ますます体内時計のズレが大きくなってしまうだけです。
また、アルコールやカフェインの摂取は、睡眠の質を妨げる要因となりますから、移動中の機内ではなるべく控えるようにしましょう。
寝る前のメラトニン摂取
メラトニンについて、別途詳しく紹介しますので、ここでは簡単な説明に留めておきます。
メラトニンとは、脳の中で分泌される神経ホルモンの一種です。脳内でメラトニンが分泌されることによって、体内時計を司る神経である視交叉上核(しこうさじょうかく)に影響を与えます。
これによって、深部体温を下げたり、睡眠と覚醒のリズムに影響を与える事が分かっています。こうした作用によって、眠る前にメラトニンを摂取すると体内時計が同調されやすくなるのです。
時差症候群と睡眠薬
色々と試してみたけれど、どうしても現地の時刻に合わせて眠れないという時には、短時間(または、超短時間)作用型の睡眠薬を活用するという方法があります。睡眠薬の力で、眠りに入る時間を現地の時刻に合わせることによって、体内時計を現地時刻に同調させるのです。
超短時間型の睡眠薬の場合、効き目が表れるのは服用後10~30分と非常に早く、効果の持続時間も2~4時間程度とかなり短い時間に限定されます。
もちろん、これはあくまでも一時的な方法で、体内時計が現地の時刻に同調され始めたら、睡眠薬は使わないようにします。
多くの短時間作用型の睡眠薬は、一時的な服用が推奨されているもので、服用が長期間にならないよう注意する必要があります。
睡眠薬とその危険性については、以下の記事も併せてご覧ください。