睡眠薬をやめるには

睡眠薬の服用を積極的に勧める人は、いないと思います。最近では、睡眠薬に関する規制も強化され、少し前と比べると医師も睡眠薬の処方に慎重になってきています。
そもそも、睡眠薬は体や精神にとって、様々な問題や健康被害などのリスクを及ぼします。近年になって、これまでは考えられなかったような副作用が明らかになることも多くなってきています。

また、睡眠薬は寝つきを良くしたり、睡眠時間を長くしてくれる反面、熟睡できる時間が少なくなるといったデメリットもあります。
このページでは、睡眠薬をやめた方が良い理由と、どのようにしてやめるべきかについて、詳しく説明します。

睡眠薬

なぜ睡眠薬をやめるのか?

睡眠薬をどうやってやめるかという話しをする前に、なぜ睡眠薬がお勧めできないのかについて、最初に触れておきたいと思います。

睡眠薬の依存には、非常に強力な側面もあります。本当に睡眠薬をやめようという強い意志がなければ(本気にならなければ)、睡眠薬をやめることは困難です。
そうした意味でも、なぜ睡眠薬を早い段階でやめないといけないのか、また、どのように服用すれば安全なのかという「正しい知識」を事前に知っておくことが重要です。
どうやって睡眠薬をやめるのか?という問題は、意志の力を強く持てば、そんなに難しいことではありません。

睡眠薬にまつわる話には、実に多様な見解があります。その一部を書き出すと、だいたい以下のようになるでしょうか。

【睡眠薬に肯定的な意見】

  • 眠れないのなら、我慢せずに睡眠薬に頼った方が良い。
  • 睡眠薬は正しく使えば安全なものだ。
  • 睡眠薬が危険だと言うのは過去の話。
  • ベンゾジアゼピン、非ベンゾジアゼピンなどの、新しい薬に依存性はない。
【睡眠薬に否定的な意見】

  • 睡眠薬には様々な副作用がある。
  • どのような睡眠薬にも依存性がある。
  • 耐性によって、睡眠薬の服用量は徐々に増えていく。
  • 睡眠薬によって、不安やうつ病を引き起こす。
人によって(立場によって)見方は大きく異なると思います。ここでは、できるだけ中立的な立場から、睡眠薬のリスクと健康に与える影響について、ひとつづつ考えていきたいと思います。

あなたが睡眠薬をやめるべき理由

私自身、数年間にわたって、毎日睡眠薬を服用し続けていました(本来、睡眠薬は長期服用すべきではありませんが)。
経験の中から、睡眠薬が健康に与える影響について、3つの大きな問題点に分けて考えてみます。

  1. 副作用の問題
  2. 依存性の問題
  3. 耐性の問題
  4. 離脱症状の問題

順番に説明していきましょう。

副作用について

薬を処方される際に、その薬についての副作用を説明されます。睡眠薬と言えば、副作用の強い薬というイメージがありますね。
しかし一方で、「最近の睡眠薬は安全だ」という言葉も良く耳にします。これには確かに一理あります。

どのような副作用が出やすいのかは、その薬によって大きく左右されます。
ひと昔前の睡眠薬と比較した場合、最近の薬は安全性は格段に上がっています。ですから、安全性が高いかどうかを知る為には、まずはあなたがどのような睡眠薬を服用しているかを把握しておく必要があります

医者によっては、新しい薬ではなく、古い薬を処方するケースだって充分にあります。
あなたが睡眠薬について、多少なりとも知識を持ち合わせていれば、不必要に副作用の強く出る薬を受け取る前に、医者に質問・相談することもできるはずです。

睡眠薬の種類について、詳しくは以下の記事に分類をまとめています。参考にされてみてください。

比較的古い睡眠薬の中でも、バルビツール酸系と呼ばれる成分を使った睡眠薬は、副作用が強く出る睡眠薬として知られています。
この薬は、常習性が強く、薬をやめにくい多量に服用すると死に至る耐性ができやすい気分が悪くなる不眠が悪化する。。などなど、多くの問題が指摘されています。
睡眠薬は怖いもの、というイメージは、ここからきていると考えても過言ではありません。

1980年頃から登場した、比較的新しい薬(ベンゾジアゼピン系)や、その後現れた(非ベンゾジアゼピン系)薬は、こうした致命的な副作用が改善されています。ハスシオンやマイスリーなどが、日本では多く使われていますね。
では、このような比較的新しい薬には副作用がないのか?というと、いえ、そんなことはありません。

人によって感じ方は様々ですが、ふらつきめまい翌朝に残る健忘(薬を飲んだ前後の事を覚えていない)不可解な行動をとるなど、ほとんどの睡眠薬に、一定の副作用のリスクは避けて通れません。

睡眠薬の具体的な副作用について、詳細は以下の記事も参考にしてください。

上記以外にも、後ほど説明する依存のリスク離脱症状のリスクも見逃してはいけません。

それから、必ず気をつけておかなければいけないことは、睡眠薬は使い方によって副作用のリスクを何倍にも増加させてしまうということです。
特に、お酒と一緒に服用する。決められた量以上を服用する。そして、長期間(2〜4週間以上)服用することは、睡眠薬の副作用・依存リスクを高めます。

睡眠薬の間違った服用方法。お酒と一緒に服用する。決められた量以上を服用する。長期間の連用

依存性の問題

依存というのは、「睡眠薬が無ければ眠れない」という思い込みや、そうした思い込みによって、睡眠薬を中止できない状態のことを言います。

最近の睡眠薬には、依存性はないと考えている方も多く居るようです。これは、患者さんだけではなく、医師や薬剤師も含めてです。
確かに、比較的新しい睡眠薬について言えば、ひと昔前の薬と比べると、薬自体の常習性は低くなってきています。

 

しかし、精神的な依存という意味において、睡眠薬の依存は強力です。特に、長期間(2〜4週間以上)の服用は、精神的な依存のリスクを大きく上昇させます。

この事を認識せず、長期間に渡って睡眠薬を服用している患者さんが増えています。
後述するように、長期間の睡眠薬の服用は「離脱症状(リバウンド)」や「耐性の問題」「多剤服用」「反跳性不眠」など、不眠の悪化や、不安・憂うつ感など精神的な不安定さにも繋がっていきます。

近年では、睡眠薬の長期服用による問題が、徐々に実態化されてきています。

精神科では、有効性を示す医学的証拠がないにもかかわらず、患者の求めに応じて睡眠薬などを多量に処方することが問題になっている。
国は処方量を減らすため、12年と14年の診療報酬改定で規制を段階的に強化し、睡眠薬などを3種類以上処方した場合、病院や診療所への診療報酬を減らす措置を取った。

出展:毎日新聞「睡眠薬:規制強化後も処方減らず

耐性の問題

睡眠薬を長期間服用するということは、睡眠薬に対して耐性が作り出される、ということを忘れてはいけません。

耐性とは、その薬に対する効果が徐々に減少することです。同じ薬を同じ量服用しても、効果を感じにくくなったり、または、全く効果を感じなくなってしまうことです。
結果、以前と同じ効果を得るために薬の量が増えてしまったり、別の睡眠薬を併用することになったりするのです。

どの睡眠薬も、2〜4週間以上の長期服用は避けるべきです。そもそも、ほとんどの睡眠薬は、長期間の服用に関して警告を促しています

これは、最近の睡眠薬に関しても、ほとんど全てに当てはまることです。睡眠薬は、脳の中枢神経という部分に作用します。睡眠薬は、長期間の服用によって、脳の感覚を鈍らせてしまうのです。

【中枢神経】
Central nervous system.svg
図:中枢神経系の模式図
1:脳、2:中枢神経系、3:脊髄
Central nervous system“. Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.

中枢神経系(ちゅうすうしんけいけい、Central nervous system)とは、神経系の中で多数の神経細胞が集まって大きなまとまりになっている領域である。

出展:「Wikipedia – 中枢神経

離脱症状の問題

睡眠薬をやめたくてもやめられないという場合、その背景には、睡眠薬の離脱症状の問題が隠れている場合もあります。
離脱症状については、以下のNHK科学文化部の2013年の報告の中でも触れられています。

長期にわたって睡眠薬を使い続け、薬に頼らないと眠れない依存性の生じる患者が多いとして、厚生労働省の研究班は、睡眠薬の適切な使用に向けた初めての指針をまとめました。

精神科医などで作る厚生労働省の研究班によりますと、不眠症の患者の19%は少なくとも4年間、睡眠薬の処方量が減らず、薬に頼らないと眠れない依存性の生じるケースが多いとみられています。
また、長期にわたって睡眠薬を飲み続けた場合に、急に薬を中断すると、めまいや震え、それに不眠の悪化など、「離脱症状」と呼ばれる禁断症状が生じるおそれもあります

出展:NHK科学文化部のブログ「睡眠薬の適切使用に向けた初の指針」

リバウンド、とも呼ばれるこの症状(離脱症状)は、長期間睡眠薬を服用していた患者さんが、服用をやめようとした時に現れます。

薬によって、また服用期間によって症状の出方は異なります。一般的には、精神的な症状ではイライラ・不安・憂うつ感など。身体的な症状では、倦怠感・疲れ・気分の悪さ・めまい、まれに痙攣や幻覚などが現れることもあります。
この他にも、ここに当てはまらないような、様々な症状が現れる可能性があるのが、離脱症状の恐ろしいところです。

後にも説明しますが、離脱症状は少しづつ薬の量を減らしていく。時間をかけて断薬するなどの方法で回避することができます。
突然、それまで続けていた薬をきっぱりやめてしまうと、離脱症状のリスクは高くなります。

睡眠薬をやめる方法

さて、ここまで睡眠薬を服用することについて、俯瞰的に説明をしました。
どのような睡眠薬を服用するのか。どれくらいの期間、服用するのかによっても、あなたの健康に及ぼす影響も異なります。
睡眠についての専門の知識を有する医師の下、短期間の服用に留めるのなら、睡眠薬の使用が著しく健康を損なう恐れは少ないはずです。

ただし、もしあなたが生活習慣の見直しや、ストレスの改善行動療法について全く学ぶことなく(実践することもなく)睡眠薬に頼ろうとしているのだとしたら、話は変わります。

こうした日常で取り組むことのできる改善方法は、思いのほか高い効果を発揮します。あなたが、まだこうした方法に取り組んでいないのだとしたら、安易に薬を服用する前に、そうした知識を身につけることから始めてみてください。

生活習慣の改善に取り組むことや、不眠についての知識を身につけることが面倒だからという理由で、安易に睡眠薬に頼ることには、強い危機感を覚えます。
そうした気持ちでは、睡眠薬を手放すことは難しいはずです。

長くなってしまいましたが、次に、睡眠薬をやめる方法について、具体的にいくつかの方法を取り上げます。

意志を強く持つ

睡眠薬の依存というと、薬に麻薬のような力があり、そのせいで薬をやめることができなくなると考えている方も多いでしょう。
確かに、薬自体の成分によって常習性を引き起こす可能性は否定できません。しかし、前にも説明した通り、比較的新しい睡眠薬の場合、薬自体には「強い常習性」はほとんどありません。

それでは、なぜ睡眠薬をやめること自体が難しくなってしまうのでしょうか。その答えは、精神的な依存にあります。

たとえ睡眠薬自体に依存性が無かったとしても、「睡眠薬によって眠れる」という安心感は、一度味わってしまうと、なかなか捨てることができません。
睡眠薬によって眠れるという事は、自分の力ではなく、薬の助けによって、不眠という苦痛から解放されるということです。

一度睡眠薬によって眠ることを知ってしまうと「睡眠薬の服用をやめてしまうと、また不眠の苦痛に悩まされるのではないか」と考えるようになります。
そのような不安から、睡眠薬を手放すことができなくなってしまうのです。これが、睡眠薬への精神的な依存の、典型的な例です。

こうした精神的な依存から抜け出す第一歩は、睡眠薬を必ずやめるという、強い意志を持つことから始まります。「このままでもなんとかなるだろう」という気持ちが少しでもあれば、状況は絶対に改善されません。
「必ず睡眠薬をやめる。このままではいけないんだ」という強い意志を持つことが大切です。
実際に、睡眠薬は長く服用し続けるほどリスクが高まります。

睡眠薬をやめる前に、医師に相談する

睡眠薬をやめるという強い覚悟ができて初めて、具体的に、どのように睡眠薬をやめるべきかを検討します。

その前に、始めに睡眠薬を処方してもらっている医師に、「睡眠薬をやめたい」という意思を素直に相談しましょう。
すでに睡眠薬を処方されている場合(特に長期間)、自分の考えで勝手に薬をやめてしまうこと、減らすことは大変危険です。
離脱症状(リバウンド)などの、いくつかの危険性が考えられます。これによって、余計に睡眠薬をやめることが難しくなってしまいます。

通常、不眠治療に前向きな医師なら、睡眠薬をやめたいという意向に賛成してくれるはずです。また、以下のような方法も、具体的に提案してくれるはずです。
万が一、医師が睡眠薬をやめることに後ろ向きな場合、他の不眠治療専門の病院に相談されてみることも検討してください(セカンドオピニオン制度)。

本来、睡眠薬は長期間使うべき薬ではないということを、常に念頭に置いておきましょう。

少しづつ、睡眠薬をやめる

長期間、睡眠薬を服用している人ほど、離脱症状の危険性は高いと言えます。
そうした心配を持つ人ほど、少しづつ薬をやめるようにします。具体的には、睡眠薬を半分に切って、そのまた半分に切ったものも準備しておきます。

少しづつ睡眠薬を減らすために。半分に割る。そのまた半分に割る。

これを活用しながら、徐々に睡眠薬の服用量を減らしていきます。
明日は3分の1で、それが大丈夫なら2分の1を試してみる。そういうふうにして、少しづつ薬が少なくても大丈夫な状況を作っていきます。

その日の調子に合わせながら、徐々に減らしていく。

このように、少しづつ睡眠薬をやめることを、「漸減法」と呼びます。

これまで薬を減らした事がないという人は、少しでも薬を減らすことに不安を覚えるでしょう。「今日は薬を減らすと眠れないのではないか..」という不安な日は、無理に減らす必要はありません。

少しづつ、時には「1歩進んで2歩下がる」でも大丈夫です。最後に完全にやめることができれば良いのです。始めから焦ってしまったら負け、という気持ちで挑みましょう。
漸減法の他にも、数日おきに薬を服用しない「隔日法」というやめ方もあります。
これは、数日おきに服用している睡眠薬を飲まない日を作り、その間隔を徐々に狭くしていく方法です。

隔日法

いずれの方法も、その人に合う、合わないがあると思います。漸減法にしても隔日法にしても、いきなり上手くいくとは限りません。
決して焦らずに、何度失敗しても引き続き「断薬する」という意思を持って継続することが大切です。

また、断薬・減薬と並行して、これまでの生活習慣や考え方を改め、不眠に対処するという姿勢も重要です。

本来、不眠症は生活習慣や考え方に原因があるために引き起こされることの多い症状です。そこを「なおざり」にしたまま薬に頼ってきたのなら、まずは生活習慣を改める必要があります。

生活習慣が変わらずに、薬だけやめようとしても、恐らく無理が出てくるでしょう。根本的には何も良くなっていないのですから、当然と言えば当然です。

減薬療法、隔日法については、以下の記事の中でも説明しています。参考にしてみくてださい。

「思い切ってやめる」という選択

ここまで、ごく一般的な睡眠薬のやめ方について書いてみました。不眠治療の本などを読んでみると、睡眠薬をやめるための漸減法や隔日法についても、一通り説明されています。

では、私個人はどのようにして睡眠薬をやめたのかと言うと、ただ「思い切ってやめた」という一言になります。
具体的には、生活習慣を細かく見直し、規則正しいリズムの生活を送るように心がけます。これができるようになった時点で、一気に睡眠薬を断薬したのです。
つまり、少しづつではなく、ある日を境に全く睡眠薬を使わなくなったということです。

これが、万人に受け入れられるやり方だとは思いません。
私の場合でも、数年間に渡って睡眠薬を服用していたわけですから、初めの数日は寝つきも悪く、途中で何度も目が覚めます。
次の日は眠くて仕方がありません。これは、かなりきついやり方です。

それでも、「睡眠薬をやめる」と硬く決意しましたから、朝は決まった時間に無理にでも起床し、昼寝もしません。
そんな多少無理な断薬を続けていると、自然と夜の時間に眠れるようになりました。
無理をしても、夜はリラックスできるように、最大限気を遣います。リラックスできなければ、眠気はやってきません。

そのような方法で、私の場合は1ヶ月もすると、自然とリラックスして眠れるようになりました。

最近では、睡眠の質を高めるためのサプリメントも、信頼できる物が販売されています。
睡眠薬をやめる際は、サプリメントを代替えとして活用することもお勧めです。

睡眠薬をやめるには

結局のところ、睡眠薬をやめるために、簡単な近道はありません。
これまで、生活習慣や正しい不眠改善に取り組んでこなかったのなら、その「ツケ」はどこかで払わなければいけません。

少しづつ薬を減らしていくにしろ、一気にやめるにしろ、どちらにしても生活習慣は改めなければいけません。
早起きは規則正しく行い、運動をしていないのなら毎日30分程度は運動を取り入れていくように努力します。夜の時間にリラックスする方法も学ぶ必要があります。

でも、そうした努力は、別に苦痛に感じるようなことではありません。むしろ、より健康的で人間らしく、自然にぐっすり眠るためのより良い選択です。
そう考えると、なんだか取り組むことが楽しみになりませんか??